日本製鋼所「技報74号」
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2.1 概要2.2 基本構造2.3 作動があるが、これまでの機構では作動途中に隙間を移動する空走工程が生じ可動盤の開き動作遅れや、ばらつきに繋がっていた(図2)。この課題に対処するためタイバーロック部に隙間をなくすための機構を装備した。これにより可動盤とタイバーとが一体化されるため、コアバックを行う際に空走工程は発生しなくなる。タイバーとハーフナットとの間に隙間がなくなるため、発泡力(金型内圧)で可動盤が動かされる状況でも応答良く動作し、コアバック制御することが可能となる。また、4ヵ所の独立したタイバー位置アジャスト装置を標準仕様よりも高速で動作応答するよう調整し、タイバーを制御することで、大量の油を使用せずにコアバック作動を実現するとともに高応答性に寄与している。J-Fシリーズの4軸コアバックでは、型締完了後からコアバック型開開始までの間にタイバーねじ部とハーフ図1 型締構造図2 空走工程 1. はじめに経済産業省が示した自動車・蓄電池産業分野におけるグリーン成長戦略には、2035年までに乗用車新車販売で電動車100 %を実現できるよう包括的な措置が講じられており、自動車メーカは対応を迫られることになった。電動車の弱点はその航続距離にあり、各メーカはそれを克服するための技術開発を進めている。その一つとして車両重量の軽量化が挙げられ、これまで一部の部品で使われていた発泡成形技術が幅広い部品へ適用され広がりを見せつつある。効率的に発泡させる手段として期待されるコアバック成形は、射出後にコア(金型)を強制的に開く手法である。自動車部品は厳しい寸法精度(肉厚)が要求されるため、より短い時間で正確な位置まで金型を開いて位置保持する必要があり、コアバック成形法でも成形機の可動盤を精緻に制御する機構が必要となる。これらのニーズに対応すべく超大型電動射出成形機J-Fシリーズの新たな機能として、4軸コアバック制御を開発した。 2. 特 長J-Fシリーズの型締装置は2プラテン機構を採用しており、タイバーねじ部を可動盤にあるハーフナット部でロックし型締するためのタイバーロック装置と、タイバー位置を調整するための装置を装備している。その機構を利用し、コアバック作動時の可動盤位置をタイバー4本にて個別の位置制御を可能にすることで、応答性と可動盤停止精度を高めたコアバック成形品の品質向上を目指した(図1)。2プラテン機構の型締装置は、可動盤配置のボールねじを用いた型開閉機構により型閉し、可動盤背面のハーフナットでタイバーねじ部をロックして固定盤に配置される型締シリンダで型締する。すると、タイバーねじ部の型締側の面がハーフナットの型締力を受ける面に密着しタイバー4軸の力が可動盤に伝達され型締力が発生する。その後のコアバックでは、タイバーねじ部の型開側の面がハーフナットの型締時とは逆側の面に密着する必要(96)超大型電動射出成形機J-Fシリーズの4軸コアバック制御超大型電動射出成形機J-Fシリーズの4軸コアバック制御

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