写真1 JLM3000-MGⅡeLの外観写真1 JLM3000-MGⅡeLの外観し、粘性を下げることで半溶融状態の溶湯の流動性を向上させる。溶融または半溶融状態となった溶湯は、スクリュにより高速で前方へ射出することによって、金型内へ充填される。チクソモールディングと同じ高圧鋳造のダイカストと比較すると、チクソモールディングで成形された成形品は、①成形品の収縮量が少なく寸法精度が高い、②引け巣などの鋳造欠陥が少ない、③耐食性が良い、④焼き付きが少ない、といった特長をもつ。また、原料チップはシリンダ内でのみ溶解・保持するため、溶解炉や防燃ガスを必要とせず、エネルギー消費量も少ないといった、環境性能にも優れている工法である。表1に3000t機の主な仕様を示す。3000t機ではチクソモールディング法マグネシウム射出成形機として初めて電動型締装置を採用している。当社はプラスチック射出成形機で電動型締装置を使用しており、これまで培った電動化技術をマグネシウム射出成形機に取り入れた。この電動型締装置に、シリンダ・スクリュサイズを大口径化した射出装置を組み合わせた構成となっている。MGⅡeシリーズのラインアップにおいて、これまで型締力が最大であった1300t機と比較し、3000t機の特長を以下に述べる。表1 JLM3000-MGⅡeL仕様日本製鋼所技報No.74(2023.11)製品・技術紹介 1. はじめに近年のCO₂に代表される温室効果ガスの排出削減に向け、自動車分野では、燃費向上のために軽量化材料を採用するマルチマテリアル化が進行している。中でも、マグネシウム合金(以下、Mg合金)は、実用金属中もっとも軽量で、放熱性、電磁波シールド性も兼ね備えた、マルチマテリアル化に欠かせない素材のひとつであり、軽量化の効果が大きい大型部品でMg合金の需要が増加している。その需要に応えるため、2019年にJLM1300-MGⅡeL(以下、1300t機)を上市したが、顧客よりさらなる大型化が求められている。例えば、自動車の液晶メータパネルは、従来ではステアリングホイール前方に配置されるものであったが、将来は助手席前方まで拡大され、より多くの情報を表示したり、エンターテイメントに利用されたりする見込みである。この他、センターコンソールやクロスカービーム、バンパーフレームなどの大型部品のマグネシウム化が進んでおり、これらの部品に対応するためには、従来機の型締力やショット重量を大きく超える必要がある。このような大型部品へ対応することを目標として、MGⅡeシリーズとしては過去最大級のチクソモールディング機JLM3000-MGⅡeL(写真1:以下3000t機)を開発し、販売を開始したので紹介する。 2. JLM3000-MGⅡeLの構成Mg合金の射出成形であるチクソモールディングの成形プロセスを説明する。まず、Mg合金のインゴットをチッピングして得られた米粒状の原料チップを、シリンダ後方のホッパから投入する。投入された原料チップは、シリンダ外周に取り付けられたヒータにより加熱されながら、スクリュ回転によってシリンダ前方に搬送されるとともに、スクリュのせん断力によって、固相を液状化(98)製品・技術紹介超大型マグネシウム射出成形機 JLM3000-MGⅡeL超大型マグネシウム射出成形機 JLM3000-MGⅡeL
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