日本製鋼所「技報74号」
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(1)型盤停止精度の向上(2)環境性能の向上(消費電力の低減、作動油量の低減)電動型締装置を採用した3000t機は、射出装置のみ油圧駆動となる。そのため、同等性能の油圧射出成形機よりも、油圧ポンプモータのサイズダウンが可能となり、ポンプ駆動時の定常負荷を低減できる。さらに、型締などの機械動作によって蓄積されたエネルギーを電気エネルギーとして回収する電源回生機能を装備しており、各々の駆動モータでの電源回生により、大幅な消費電力の低減を実現した。これにより、図1に示すように、消費電力が約20%(3)超大型駆動装置と制御技術(4)射出性能の向上1300t機のスクリュ径110mm、計量ストローク300 mmに対し、3000t機ではスクリュ径を130 mmに大径化し、計量ストロークを400 mmに延長した。これにより1300t機に対して理論射出体積が1.9倍に、理論射出率が1.4倍に向上し、より大型の成形品への対応が可能となった。 4. おわりに自動車分野をはじめ、大型Mg合金部品の需要はますます増えていくことが予想される。今後も、市場の要求に応えられる成形機の技術開発を進め、自動車の軽量化による燃費向上などを通して、低炭素社会への実現に貢献していく所存である。図1 電動型締装置による省エネ効果図2 制御システム構成図(99) 3. JLM3000-MGⅡeLの特長1300t機まで採用していた油圧型締装置は速度、位置がオープンループ制御であるため、コントローラからの指令値との誤差が大きくなる。そのため、慣性流れにより可動盤が設定位置で停止せず、停止位置もばらつきが発生する。一方、3000t機で採用した電動型締装置は、速度、位置ともにクローズドループ制御であるため、指令値と誤差が無いように制御される。また、型盤位置は0.1mmの精度で制御しているため、高速で型開閉を行っても油圧型締装置のような慣性流れがなく、設定位置に正確に停止する。この型開閉動作の連続安定性向上によって、サイクル時間の短縮や取出機のチャックミスの低減を可能とした。低減できる試算である。また、1300t機よりも作動油量が低減できたことで、油圧機器による発熱量やオイルクーラの冷却水量の低減など、環境性能が向上した仕様となっている。型締装置の制御は、プラスチック成形機で実績のある2軸サーボ技術を改良した多軸同期制御技術を流用し、ハイパワーかつ高精度な制御システムを実現している。制御システムの構成図を図2に示す。このシステムの特長として、大電力を最小限給電で実現するために、大容量高効率コンバータを標準装備し、さらに上述の電源回生機能によって、高効率かつ最小の設備容量で動作する点が挙げられる。3000t機は、成形機全体で合計8軸の多軸サーボによる制御システムとして構成されており、それに対応する制御装置も大型化となる。これをコンパクト化するために、SYSCOMコントローラとして実績の高い分散制御システムと、多軸高速通信技術、さらに並列コンバータの技術を生かし、制御盤を可能な限りコンパクトに設計し、省スペース化を実現した。製品・技術紹介製品・技術紹介

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