日本製鋼所「技報74号」
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サファイアを用いた波長板の位相差特性シミュレーション結果を図4に示す。水晶厚み284 μm(波長550 nmのとき位相差1710°)とサファイア厚み358 μm(波長550 nmのとき位相差1890°)を貼り合わせ、波長550 nmで180°となる構成の場合、波長550 nmで同様に比較すると、位相差が±1.6°しか変化しないことがわかる。今回設計した構成2のZカット板を用いた波長板の位相差特性シミュレーション結果を図5に示す。水晶基板の厚み330 μmと300 μmのλ/2波長板に厚み312 μmのZカット板を貼り合わせ、波長550 nmで180°となる構成の場合、波長550 nmで同様に比較すると、位相差は±0.2°しか変化せず、構成1よりも位相差変化が小さいことがわかる。図3~図5の位相差特性シミュレーション結果における波長550 nmでの位相差の値を表1に一覧とした。構成1と構成2を比較すると構成2のほうが、位相差変化が小さい結果となっているのは、両者の補正原理の違いによるものである。構成1では入射角依存性は水晶とサファイアの厚み、構成2ではコンパウンドゼロオーダー波長板の厚みとZカット板の厚み比によって決まる。構成2ではコンパウンドゼロオーダー波長板とZカット板の厚み比を最適な値にすることで、入射角による位相差変化をゼロで設計することが可能である。なお、構成1はλ/2波長板とλ/4波長板に適用可能であるが、構成2はλ/2波長板のみで、λ/4波長板には適用できないという点で注意が必要である。これは補正のために貼り合わせたZカット板の水晶に旋光性があるためである。2項で説明した原理は水晶、サファイア以外の材料においても適用可能であるが、材料の屈折率、加工性、入手性の観点を考慮して、水晶、サファイアの2種の材料でのラインナップとしている。 4. おわりに光学製品の高性能化に伴い、波長板などの光学部品に対する要求も高まってきており、本設計製品が各種光学製品に採用されるように拡販を進めていきたい。接着剤の種類、接着構造の検討による高輝度、高耐熱性への対応、広帯域、特定波長の波長板の設計などへの対応を進め、さらなる波長板の高機能化に取り組んでいきたい。図3 従来構成の位相差特性シミュレーション結果図4 構成1の位相差特性シミュレーション結果図5  構成2の位相差特性シミュレーション結果表1 従来品と開発品の入射角依存性の比較 (107)製品・技術紹介製品・技術紹介

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