日本製鋼所「技報74号」
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【STEP2.クエリの生成・近傍データの抽出】【STEP3.PIDゲインの算出】データベース駆動型制御を用いた巻取機におけるフィルムの張力制御コントローラ開発【STEP4.PIDゲインの学習】4.1 簡易モデルを用いた検証(10)おけるデータセットを生成してデータベースに格納するはことで初期データベースを作成する。ここで、以下である。は比例ゲイン、は微分ゲインを表す。STEP1の時点では、固定の初期PIDゲインによって操業されているため、θ(t₁)= ⋯ =θ(tN(0))である。ただし、 N(0)は初期データベースにおけるデータセットの数を表している。時刻 t における操業データ呼ぶ。操業データを用いて時刻 t におけるクエリを以下のように生成する。ここで、 r0, y0, u0 は、初期の操業データの目標値、システム出力、制御入力を表している。次にクエリ示す重み付きノルムを使用する。ここで、nyはシステム出力の次数、nuは制御入力の次数、 l はクエリの要素番号、N(0)は初期データベース内に蓄えられているデータセットの数を表している。は、データベースにあるすべてのまた、情報ベクトルの l 番目の要素の中で最も大きな要素、は同様に、最も小さな要素を示している。式(1)により求められた距離が小さいものから上位n個の操業データをクエリの近傍データとして抽出する。STEP2において選択された近傍データに対して式(2)に示す重み付き線形平均法を用いることでPIDゲイン を算出する。は積分ゲイン、をクエリ(要求点)ととデータベース内の情報ベクトル の距離を計算する。距離の算出には式(1)で ここで、ただし、 ωi は選択された第 i 番目の情報ベクトルに含を満足まれるするものとする。STEP3で得られたPIDゲインをFictitious Reference Iterative Tuning(FRIT)法に基づき修正し、近傍データとして抽出されたデータセットのPIDゲインを学習結果に基づき更新する。FRIT法と最急降下法に基づくオフライン学習則を式(3)に示す。 ここで、 ただし、 (1)STEP2~STEP4を繰り返すことでオフライン学習を行う。ここでは、MathWorks社のMATLAB/Simulinkを用いてシミュレーションを実施した。まず初めに、図8に示すような巻出軸 –フィードロール– 巻取軸で構成される装置を制御対象とした簡略モデルの作成を行った(4),(5)。このときの簡略モデルブロック線図を図9に示す。巻出軸は受動ロールのため、コントローラが存在せず、制御対象モデルのみとなっている。ここではスパン2の張力制御コントローラ(図9赤枠部)に対してデータベース駆動型制御を適用することでスパン2における張力 T2 の制御を行った。ただし、スパン2の張力制御コ⋯(2)は以下である。に対する重みであり、は以下である。 は学習係数ベクトル、⋯(3)は疑似参照入力に対する参照モデル出力を表している。オフライン学習では、クエリが初期の操業データのみで生成されているため、繰り返し学習を行うと、同じクエリを持つデータセットが増え続けてしまう。そこで、学習されたPIDゲインの結果に基づき近傍データがもつPIDゲインに上書きすることにより、初期データベースのサイズは変えずに、PIDゲインの修正を行う。4. 数値例

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