日本製鋼所「技報74号」
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4.2 巻取試験機モデルを用いた検証データベース駆動型制御を用いた巻取機におけるフィルムの張力制御コントローラ開発ントローラには比例先行型PI制御器を適用した。まず、初期データベース作成のために張力制御コントローラのPIゲインを固定PIゲインとしてシミュレーションを行った。このときのシミュレーション結果を図10に示す。ただし、巻出軸の半径 r1 と巻取軸の半径 r3 について、巻出軸の半径 r1 は時間経過と共に減少させ、巻取軸の半径 r3 は時間経過と共に増加させた。図10より立ち上がりはオーバーシュートして振動しているが、発散することなく制御できていることが分かる。図10のシミュレーション結果を初期データベースのデータセットとして、データベース駆動型制御器の適用を行った。データベース駆動型制御を適用したときのシミュレーション結果を図11、各制御手法の目標値に対して誤差が10 %以内となるまでの整定時間を表1に示す。図11より、データベース駆動型制御を適用することでオーバーシュートが低減され、振動が抑制されていることが分かる。また表1より、データベース駆動型制御を適用した場合の方が固定PI制御より整定時間が約63.5 %早くなっていることが分かる。これは、運転状況に応じた最適なPIゲインを用いて制御が行えるようになったためであると考えられる。以上より、簡易モデルに対するデータベース駆動型制御の有効性を確認できた。ここでは巻取試験機モデルを用いた検証を行った。まず、実機検証で使用する巻取試験機と同等のモデルを作成した。巻取試験機モデルの構成図を図12、ブロック線図を図13に示す。図12、図13において青色の破線で囲まれた部分が簡易モデルからの変更箇所を表している。巻取試験機モデルは、フィードロールが2本あり、巻出軸、フィードロール1、2、巻出軸の全ての軸が駆動ロールとなっている。簡易モデルは駆動ロールが2軸であったのに対して、巻取試験機モデルは駆動ロールが4軸のため、図13からも分かるようにシステムが複雑になっていることが確認できる。ここではスパン1の張力制御コントローラ(図13赤枠部)に対してデータベース駆動型制御を適用することでスパン1における張力の制御を行った。巻取試験機モデルにデータベース駆動型制御を適用したときのシミュレーション結果を図14に示す。赤色の実線がデータベース駆動型制御を適用したときの張力制御結果、緑色の破線は初期データベース作成に用いた固定PIゲインを用いたときの張力制御結果を示している。また、表2に各制御手法の平均立ち上がり時間を示す。図14と表2より、固定PI制御の結果よりもデータ図8 簡略モデル構成図図9 簡略モデルブロック線図図10 固定PIコントローラでの張力制御結果図11 データベース駆動型制御 適用結果表1 各制御手法の整定時間(11)

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