日本製鋼所「技報74号」
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データベース駆動型制御を用いた巻取機におけるフィルムの張力制御コントローラ開発4.3 類似度に基づくデータベース駆動型制御手法(12)図12 巻取試験機モデルの構成図図13 巻取試験機モデルのブロック線図図14 データベース駆動型制御による張力制御結果表2 各制御手法の平均立ち上がり時間ベース駆動型制御の結果の方が、応答が早くなっており、立ち上がり時間が約29.6 %改善されていることが分かる。これは、データベース駆動型制御を適用したことにより、システム特性に応じたPIゲインを用いた制御が行えたためであると考えられる。一方で 200秒以降では、データベース駆動型制御の制御結果と固定PI制御結果にあまり差が見られないが、これは目標値の変化が小さかったため、PIゲインの調整幅も小さくなったことが要因であると考えられる。こちらは学習回数を増やすことで制御性能の向上が期待できる。以上より、巻取試験機モデルに対してデータベース駆動型制御の有効性を確認できた。4.2節では、巻取試験機モデルにデータベース駆動型制御を適用した場合の有効性を確認できた。しかしながら、データベース駆動型制御を実際の装置に適用することを考えたとき、計算コストが課題として挙げられる。オフライン学習によるデータベース駆動型制御では、データベース内の全データを参照してPIゲインの調整を行うため、データベース内のデータ数が多いと計算コストも増加する。そのため、計算コストが大きくなると装置の制御周期内に計算が終わらず、制御ができない可能性がある。こうした問題を解決するため、カーネル密度推定を用いた類似度に基づくデータベース駆動型制御法が提案されている(6)。本手法では、データセットに新規データを追加する際とデータベース駆動型制御適用時に近傍データを抽出する際、それぞれにおいてデータベース内の全データとの類似度を算出する。データセットに新規データを追加する際においては、算出した類似度に応じて新規データをデータベース内に格納するかを判断できる。そのため、類似度が高いデータを格納しないことでデータベース内のデータ数を削減できるので計算コストの低減が可能となる。近傍データを抽出する際においては、類似度の高いデータのみを近傍データとして抽出できるため制御性能の向上が可能となる。以下に本手法の詳細を示す。ある新規データを既存のデータセットに追加する場合を考える。新規データを追加する際は、データから式(4)を用いてカーベース内のデータセットネル密度関数に基づく類似度 S を算出する。⋯(4)

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