日本製鋼所「技報74号」
17/114

データベース駆動型制御を用いた巻取機におけるフィルムの張力制御コントローラ開発ただし、式(4)における 一方で、類似度が低い場合は S→0 となる。ここで、新規データをデータベース内に格納するかを判断するた を導入する。新規データめの閾値 を既存のデータベース内の全データについて式(6)を満たす場合のみ追加する。ある時刻 t におけるクエリを近傍データとして抽出する。以上を踏まえて、スパン1の張力制御コントローラ(図13赤枠部)に対して類似度に基づくデータベース駆動型制御を適用したシミュレーションを実施した。結果を図15に示す。赤色の実線は類似度に基づくデータベース駆動型制御を適用したときの張力制御結果、緑色の一点鎖線は従来のデータベース駆動型制御を適用したときの張力制御結果、水色の破線は固定PIゲインを用いたときの張力制御結果を示している。また、表3に各制御手法の平均立ち上がり時間を示す。図15より、従来のデータベース駆動型制御の結果と比べて類似度に基づくデータベース駆動型制御の結果の方が、応答が早くなっており、立ち上がり時間が約48.3 %改善されていることが分かる。これは、従来のデータベース駆動型制御では近傍データに類似度の低いデータが使用されていたが、類似度に基づくデータベース駆動型制御では類似度の高いデータのみを近傍データとして抽出したため、より最適なPIゲインが算出できたためであると考えられる。また、2つの手法の平均計算時間とデータベース内のデータ数を表4に示す。表4より、類似度に基づくデータベース駆動型制御は従来のデータベース駆動型制御に比べて とは、データセットにおける j 番目の情報ベクトル、 i 番目の要素を指している。また、 hi はバンド幅を表しており、プラグ・イン法を用いている。式(4)において、類似度が最も高くなるのは、情報ベクトルが全く同じ場合であるため、類似度の最大値は以下となる。 に対する近傍データを抽出する際においても、上記と同様にして、閾値 によって決まる式(7)を満たすもの平均計算時間を85 %程度低減することができたことが分かる。これは、類似度の高いデータをデータベース内に格納しないことにより、データベース内のデータ数が減少したためであると考えられる。したがって、類似度に基づくデータベース駆動型制御の有効性を確認することができた。⋯(5)⋯(6)⋯(7)図15 提案法による張力制御結果表3 各制御手法の平均立ち上がり時間表4 各手法の平均計算時間とデータ数(13)

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る