日本製鋼所「技報74号」
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3.1 射出ユニットの構成とモデリングマグネシウム合金射出成形機を対象とした連成解析技術の構築ここで、本開発で対象としたMG成形機の場合、油圧機構を採用していることから、機械部品と作動油の相互作用を考慮しつつ、高速・高加速な動的挙動を把握する必要がある。そのため、構造解析、流体解析、機構解析といった数値解析を単独ではなく、組み合わせて実施できることが望ましい。そこで本開発では、図4に示す構成により、制御-機構-構造-流体の四要素を組み合わせた連成解析について検討した。ここで、制御モデルは油圧回路、機構モデルと構造モデルは主として射出ピストン、流体モデルは射出シリンダ内の作動油を表現する。制御モデルで算出した油圧回路内作動油の流量と圧力を流体モデルに伝えて射出シリンダ内の挙動を表現する。モデリングの詳細を射出ユニットの構成と併せて3章に記載する。射出ユニットの構成を図5に示す。射出シリンダ内部は射出ピストンによって前後(流入ポート側と流出ポート側)に区切られており、射出ピストン前後の差圧によって射出ピストンが駆動する。射出動作を行う際には、作動油をアキュムレータに蓄圧した後、バルブを目標開図3 MBD手法によるV字プロセス図4 連成解析の構成度まで高速で開くことによって、作動油を流入ポートから射出シリンダに流入させる。これにより流入ポート側の圧力を瞬間的に高くすることで、射出ピストンの高速・高加速な動作を実現する。また、当社のMG成形機の射出ユニットには、射出ピストンの位置に応じて流出ポートの開度を調整することで、射出ピストンを減速・停止させるブレーキ機構を搭載している。具体的には、射出ピストンが一定以上前進すると射出ピストン自身で流出ポートの一部(流出ポートA)をふさいでいく構造となっている。これにより、流入ポート側と流出ポート側の圧力差を射出ピストン位置によって調整することで、高速・高加速で駆動させた射出ピストンを機械的に減速・停止させることが可能な構成となっている。本開発では、MG成形機の動的挙動を表現できる連成解析手法の構築を目指して、油圧回路による制御に加えて、ブレーキ機構を表現する射出ピストンと射出シリンダの三次元形状を考慮したモデリングを行った。モデルの構成を図6に示す。まず、射出ピストンは動的な変位と各部の変形を表現するために機構モデルと構造モデル図5 射出ユニットの構成図6 射出ユニットモデルの構成(17)3. 射出ユニットのモデリング

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