日本製鋼所「技報74号」
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2.2 プロセスマップの構築Ni基超合金IN-100の高温変形におけるプロセスマップ3.1 鋳造材の初期組織プロセスマップは、Prasadにより提唱された、動的材料モデル(DMM)に基づいて塑性変形における安定変形領域を求める手法である。塑性変形時、試験片に投入される仕事は次の式で表される。ここで、右辺第一項はG contentと呼ばれ、投入エネルギーのうち熱として試料に吸収された分を示す。また、右辺第二項はJ co-contentと呼ばれ、熱として試料に吸収されなかった仕事の、動的回復・再結晶やき裂の発生といった組織変化への寄与を示す。JとGの比はひずみ速度感受性指数とも呼ばれ、次式で表される。一方、σはε̇の累乗にて表される。式(3)および(4)より、Jは次のように表される。m = 1のとき、Jは最大値(Jmax = σ・ε̇/2)となり、投入した仕事の半分が熱として吸収され、残りの半分が組織変化に寄与する。Jmaxに対するJの比は仕事の分散効率(η)と呼ばれ、ηの等高線を温度とひずみ速度に対してプロットした分散効率マップにより、熱間加工性を定量評価できる。塑性流動が最も良好になるのは、与えられた仕事の内、組織変化への寄与が最大になる場合、すなわちJが極大になる場合に対応する。 一方、高温変形に伴う塑性変形の不安定性は、次に示すZieglerのcriteriaを用いて表される(15)。式(7)が満たされる場合、系のエントロピー生成と仕事によるエントロピー増加にミスマッチが生じ、塑性流動の局在化や塑性不安定が生じるという物理的意味を持つ(15)。本研究では、前項の補正応力を用いて導出したm 値より、分散効率マップとInstabilityマップを作成し、これを組み合わせることでプロセスマップを構築した。図1に鋳造材の反射電子像およびSEM-EDS面分析結果を示す。以下では、本組織を初期組織と称する。図1(a, b)より、紙面上下方向に柱状晶が成長し、その内部には1 µm程度のサイズの微細なγ’相の析出が認められた。一方、柱状晶境界付近の最終凝固部には数十µm程度のγ/γ’共晶組織が点在して認められた。後述するが、柱状晶サイズは本視野からは判別できないものの、幅・長さ共に約1 mm以上と粗大であった。また、最終凝固部に認められる共晶γ/γ’近傍には、数µm程度のサイズの黒色の塊状相が認められた。これらは、図1(c)に示すTi、Mo、Cの濃化傾向からMC系炭化物と推定される。(2)(3)(4)(5)(6)図2に初期組織の結晶方位解析結果を示す。Image Quality(IQ)マップより、紙面上下方向の柱状晶成長方向におおむね平行に、凝固時に形成されたと推定される大角境界が形成され、その界面および柱状晶内にはMC系炭化物が認められた。また、紙面上下方向(TD方向)の結晶方位を示す逆極点(IPF)マップより、強い<001>配向が認められた。<001>は立方晶系の凝固における優先成長方向であることから、この結果は妥当である。以上より、初期組織は柱状晶が圧縮軸方向に対して平行に配列した一方向凝固組織である。(7)図1 (a, b)初期組織縦断面の反射電子像および(c)EDS面分析結果(23)3. 結果および考察技術論文

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