日本製鋼所「技報74号」
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3.2 応力-ひずみ曲線Ni基超合金IN-100の高温変形におけるプロセスマップ(24)図3に、熱間圧縮試験後の供試材縦断面を示す。1100 ℃以上において、柱状晶界面から発生したと考えられる軽微なクラックは散見されるものの、試験機治具による拘束のない試料側面は比較的左右対称なバルジ変形する傾向を示した。一方、1000 ℃以下の低温においては、ひずみ速度に関わらず圧縮軸に対して45°方向に、断熱せん断帯(ASB)に沿って生じたと考えられる大割れが発生する傾向であった。図2 初期組織縦断面のEBSD結晶方位解析結果:(a)IQマップおよび(b)IPFマップ(TD方向)図3 熱間圧縮試験後の供試材外観図4に、各温度、ひずみ速度における真応力−真ひずみ曲線を、各ひずみにおける補正応力(●)と共に示す。1200 ℃では、全てのひずみ速度において、低ひずみ側では、ひずみの増加に伴い真応力は明確なピークを示さず、一定値に収束する動的回復(Dynamic Recovery : DRV)型に近い傾向を示した。ひずみ速度の増加に伴い、真応力は増加した。0.1 s-1以上の高ひずみ速度においては、高ひずみ側の領域で加工硬化傾向を示した。一方、1100 ℃以下では、全ての条件において同様の真応力の変化傾向を示した。すなわち、真応力はひずみの増加に伴い急激に増加してピーク値を示した後、さらなるひずみの増加により緩やかに減少する動的再結晶(Dynamic Recrystallization : DRX)型の挙動を示した。ピーク応力は、ひずみ速度の増加および温度の低下に伴い増加した。なお、1050 ℃以下では、図中に矢印で示すように、一部の試料の高ひずみ側で、応力が減少した後再び増加に転じる傾向が認められ、この傾向は特に900 ℃の高ひずみ側で顕著であった。図3に示した試料縦断面との対応から、この真応力の変化傾向はASBでの大割れに対応するものと考えられる。日本製鋼所技報No.74(2023.11)技術論文

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