取締役常務執行役員井上茂樹日本製鋼所技報74号の発行にあたり一言ご挨拶を申し上げます。2022年2月に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻に端を発した国際情勢の不安定化、経済安全保障上のリスク拡大、そしてエネルギー・原材料の高騰は、世界中を揺るがす課題となっています。また、数年に及んだ新型コロナウィルスの世界的流行は人々の価値観や働き方を変え、産業構造まで変化させてしまうほど大きな影響をもたらしました。取り巻く環境は変化していますが、当社グループはこれまでにも、鋼とプラスチックという素材を革新し、『Material Revolution(材料革命)』により、各時代の社会課題を解決してまいりました。これからも素材を革新する技術を一層磨き、お客様や社会が抱える課題の解決と持続可能で豊かな社会の実現に貢献することを目指してまいります。その一端として、2022年11月、当社グループにおける「事業を通じた価値創造と社会課題の解決」と「持続的成長に向けた経営基盤の強化」という2つの視点から優先的に取り組むテーマとして6つのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。これらのうち前者の視点では、「プラスチック資源循環社会の実現」、「低炭素社会への貢献」、「超スマート社会への貢献」を掲げ、当社グループのコア・コンピタンスを最大限に活用することで、これらのマテリアリティの解決に向けた実効性のある経営および事業活動に取り組んでいます。また、これらの活動を加速すべく、2023年4月、当社グループ全体の研究開発体制を見直し、コア・コンピタンスの技術的優位性の維持・強化と、新たな事業創出を含めた事業拡大を実践するため、新たに「イノベーションマネジメント本部」を設立しました。ここに、マテリアリティに適合する新規テーマの探索・立案および基盤技術の研究開発という全社的なイノベーション創出のための機能を集約しました。具体的な組織体制としては、イノベーション企画部(本社)を中核に、先端技術研究所(広島)、マテリアル技術研究所(室蘭)、電子デバイス技術研究所(横浜)の3研究所を新設し、研究開発体制の強化を図っています。本号では、新設した各研究所の活動を中心に、当社グループの主力製品のさらなる高度化を狙うと同時に、コア・コンピタンスである「機械要素技術」と「精密制御技術」の強化にもつながる「データベース駆動型制御コントローラの開発」、「4連成解析技術の構築」、「二次介在物の生成メカニズム解明と解析手法」など、各種解析技術や高度化した制御技術、および主力製品における基盤技術の研究成果の一例を報告するとともに、事業部門からは最新技術を搭載した新製品の数々を紹介します。当社グループは創業以来引き継がれているチャレンジ精神のもと、時代が求める先端技術に常に挑戦してまいりました。これからも不易流行のごとく、コア・コンピタンス継承とイノベーション創出の両輪を駆使し、社会課題を解決する産業機械と新素材の開発・実装に貢献する新技術・新製品の開発に取り組んでまいります。日本製鋼所グループの技術経営に対する取り組みに対しご理解をいただき、今後とも変わらぬご指導とご鞭撻をお願い申し上げます。巻 頭 言
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