Ni基超合金IN-100の高温変形におけるプロセスマップ(28)動的再結晶粒は、criteria 1によりsub-grain等の下部組織と区別される。また,粗大な未再結晶粒はcriteria 2により区別される。また、動的再結晶直後の転位密度は非常に小さいが、その後の変形により再び増加する(17),(18)。したがって、criteria 3の粒内に蓄積された方位差により、加工に伴う動的再結晶粒と、加工後の熱扱いにより形成した静的再結晶粒とを区別することができる。なお、GAM値は、局所的方位差の指標によく用いられるKAM (Kernel Average Misorientation)値の結晶粒ごとの平均に相当する。図9に、1200 ℃におけるGAMマップと、IPF+IQマップおよび方位差分布を示す。なお、観察領域は図6において、<001>配向したバンド状の領域の間に形成された等軸晶領域である。0.01 s-1において(図9(a, bおよびg))、圧縮方向に対して垂直に伸長した直径20 µm程度の結晶粒が認められた。伸長した結晶粒図9 (a-f, j)1200 ℃における結晶方位解析結果と、(g-i)方位差分布:(a, c, e)GAMマップおよび(b, d, f)IPF+IQマップ(a, b, g)0.01 s-1, (c, d, h)0.1 s-1,(e, f, i) 1 s-1および(j)GAMとIPF マップのカラーキーの多くは0.8以上の高いGAM値を示す。また、これら伸長した結晶粒の他にも、HABで囲まれた5 µm前後の微細結晶粒も認められる。微細結晶粒のGAM値は伸長した結晶粒より小さく、おおむね0.2~0.6の範囲に収まっている。上記のcriteriaより、微細粒は動的再結晶により形成されたものと判断される。一方、図9(b)のIPF+IQマップより、伸長した粗大結晶粒中にはsub-grainの形成が認められる。これら粗大結晶粒は<101>配向しており、図6で示された結晶回転により形成されたものと考えられる。図9(g)に示す粗大結晶粒中の方位差分布より、粗大結晶粒内では方位差は連続的に増加する。また、数µm程度の間隔で認められる方位差の不連続な増減は、sub-grain境界に対応すると考えられる。結晶粒中の連続的な方位差の増加は、低角境界(LAB)における方位差が徐々に増加しHABが形成されるとする連続動的再結晶(cDRX)の特徴と一致する(19)。しかし、cDRXは日本製鋼所技報No.74(2023.11)技術論文
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