日本製鋼所「技報74号」
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2.1 試験方法大型鍛鋼品における空隙閉鎖評価式の検討2.2 弾塑性解析方法塑性解析は依然として計算コストが大きいことから、製造検討のたびに行うのは現実的ではない。そのため、空隙をモデル化しない中実モデルで空隙相当位置の応力やひずみの状態を解析し、それらの値から計算される評価式で空隙閉鎖の可否を判断するのが一般的である。空隙閉鎖に関する評価式はこれまでに多くの研究者によって検討されており、例えば静水圧応力比積分Gm(3)(4)(5)(6)がある。当社でもGmを用いて空隙閉鎖の評価を行ってきたが、毛利ら(7)も指摘するようにGmには鍛造の方向性を表現できない相当塑性ひずみεeqが用いられているため、複数の方向から繰り返し圧下される自由鍛造では評価精度に課題があった。そこで本報告では、弾塑性解析による数値実験を基に圧下方向を考慮した空隙閉鎖評価式Rvを構築し、実鋼塊を用いた鍛造試験でその評価式の妥当性を検証した。弾塑性解析による数値実験を行うにあたり、その解析精度を検証する必要がある。そこで、貫通孔を有する試験材を用いて鍛造試験を行い、貫通孔の変形挙動と弾塑性解析結果を比較することで、解析精度を検証した。Fig. 1に鍛造試験の模式図を示す。供試材にはNiCrMoV鋼を用いて、金敷形状は上下平金敷および120°の開角を有する上下V金敷の2通りとし、試験材は中心にφ2 mmの貫通孔を有する□70 mm×L40 mmとφ80 mm×L40 mmとした。Fig. 2に試験装置の外観を示す。試験には加熱炉を有する1000 kNプレス装置を用い、圧下速度は0.5 mm/s、加熱温度は1200 ℃とした。圧下パスは4パスとし、金敷によらず奇数パスはx方向、偶数パスはy方向から圧下した。このとき、各パスにおける貫通孔の変形挙動を観察するため、各金敷形状に対して4個の試験材を用意し、1~4パスの鍛造を行った。試験後には z方向の中央で試験材を切断し、外形と貫通孔の断面寸法を測定した。 Fig. 1 Schematic illustration of dies and test pieces of the forging test弾塑性解析には汎用有限要素解析コードABAQUSを用いた。メッシュモデルはFig. 3に示す1/8モデルとし、要素には8節点六面体要素を用いた。また、試験材は弾塑性体、金敷は剛体で定義した。試験材の材料特性はヤング率E = 100 GPa、ポアソン比v = 0.3とし、変形抵抗曲線にはFig. 4に示す円柱圧縮試験(8)で測定したデータを用いた。試験材-金敷の摩擦はクーロン摩擦係数μ= 0.5とした。 Fig. 3 Mesh model of material with a hole(1/8 model)Fig. 2 Forging test apparatusFig. 4 Flow stresses of NiCrMoV steel2. 鍛造試験による解析精度の検証(42)

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