日本製鋼所「技報74号」
53/114

5.2 弾塑性解析大型鍛鋼品における空隙閉鎖評価式の検討Fig. 21 Mesh model of the forging test with an actual ingot弾塑性解析にはFig. 21に示す1/4モデルを用いた。材料特性や摩擦係数は2.2節と同じ値を用いた。また、空放時間は実機試験と同様とした。Fig. 22に弾塑性解析で計算した評価式Rvと実機試験において空隙が残存した領域を比較したコンタ図を示す。弾塑性解析結果は実機試験で空隙が残存したほとんどの領域でRv<1.0となっており、空隙の残存がおおむね予測できていた。しかしながら、空隙が残存した領域でもTop側はRv = 1.0となっており、空隙閉鎖を過剰に評価した領域が存在した。これは、実機試験における金敷送り量を弾塑性解析で正確に再現できていないためと考えられる。しかしながら、大型鋼塊の鍛造において実機の金敷送り量を正確に把握し、それを弾塑性解析に反映させることは極めて困難であることを考慮すれば、本解析結果は精度よく空隙の残存を評価できていたと考える。一方で、実機試験で空隙の残存が認められなかったBot.側の空隙発生予測域は、弾塑性解析ではRv<1.0と空隙が残存する予測結果となり、空隙閉鎖を過小に評価した。これは空隙発生予測域のBot.側ではTop側に比べて空隙の数が少ないためと考えられる。空隙の数が少ない場合、空隙同士の隣接距離が大きくなると考えられるが、毛利らの報告によれば隣接距離が近くなるほど閉鎖しにくくなる(7)。実機試験でもBot.側では空隙同士の間隔が広く、空隙閉鎖が容易であったと推定される。以上の結果から、構築したRvは実機の検討をする上で十分な精度を有しており、εpとσm/σeqの両方を空隙閉鎖の評価因子とすることで空隙閉鎖挙動の評価精度が向上することを示した。今後の課題としては、本評価式は初期の空隙形状が理想的な球形状を仮定しているため、さらなる評価精度の向上には初期の空隙形状の影響を加味する必要があることが挙げられよう。(1/4 model)Fig. 22 Comparison between the result of the forging test 本研究では、自由鍛造時の圧下方向を考慮した空隙閉鎖評価式を構築し、実鋼塊を用いた鍛造試験でその精度を検証した。その結果を以下にまとめる。(1)平金敷で圧下した場合は素材が圧下方向の直角方向(y方向)へ横膨らみしやすいため、空隙も扁平変形しながら閉鎖した。一方、V金敷では素材の横膨らみが抑えられるため、空隙の扁平変形が抑制されながら空隙が閉鎖した。(2)平金敷、V金敷とも偶数パスの空隙体積減少率1 - V/V0の変化量が小さく、特に平金敷ではその傾向が顕著であった。これは、前パスで楕円形状となった空隙の長径方向を圧下する場合は短径方向を圧下するよりも空隙が閉鎖しにくいためと考えられる。 (3)多パス鍛造の数値実験結果を基に、従来の評価式Gmの評価精度を検証したところ、空隙閉鎖の閾値が一意に定まらなかった。これは、Gmの計算に評価因子として鍛造方向を考慮できない相当塑性ひずみεeqを用いているためと考えられる。即ち、空隙閉鎖の評価因子としてεeqは適切ではない。(4)鍛造方向を考慮するにはεeqではなく、圧下方向の真ひずみεpで空隙閉鎖を評価する必要があるものの、温度分布が異なると内部のσm/σeqが変化するためεpのみでは空隙閉鎖を正確に評価できない。そのため、空隙閉鎖挙動を精度よく評価するにはεpとσm/σeqの両方を評価因子とする必要がある。(5)数値実験結果のεpとσm/σeqを基に粒子群最適化法を用いて構築した空隙閉鎖評価式Rvの評価精度をand predicted reduction of void volume(49)6. 結  言技術論文

元のページ  ../index.html#53

このブックを見る