日本製鋼所「技報74号」
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二軸押出機TEX®用特殊混練スクリュいて高い吐出量を得るには、廃棄樹脂を均一かつ効率的に可塑化することが必要である。また、ケミカルリサイクルでは、廃棄樹脂への熱エネルギーの付与が高い吐出量を得る上で重要である。二軸押出機では、シリンダ外壁面に取り付けられた電気ヒーターを用いて、樹脂に熱エネルギーを加えることが可能である。これは、シリンダ内壁面を介して樹脂に熱伝達を行う外部加熱方式であり、樹脂の性状(粒子径、嵩密度、熱伝導率など)によって熱伝達効率が大きく変化する。そのため、性状が多様な廃棄樹脂を対象としたリサイクルプロセスでは、熱伝達によって十分な熱エネルギーを廃棄樹脂に加えることができないため、高い吐出量を得ることができない。また、二軸押出機のシリンダに装着可能な電気ヒーターの容量にはシリンダ外壁面の面積などの影響で限界があるため、ケミカルリサイクルでは吐出量の向上を図る上でボトルネックとなることがある。一方、二軸押出機は、スクリュ回転によって樹脂に圧縮とせん断を加え、樹脂に熱エネルギーを加えることも可能である。これは樹脂に自己発熱を生じさせる内部加熱方式である。スクリュ回転は減速機を介してモーターよりもたらされるが、近年では二軸押出機の減速機・スクリュ軸の高剛性化が進んでいるため、高トルクおよび高動力モーターを採用することが可能となっている。これによって、二軸押出機の混練性能が向上するため、優れたエネルギー伝達を実現することができ、高い吐出性能が得られると期待される。本報では、従来のニーディングディスク(KD)よりも優れた混練性能を有する特殊混練スクリュ“Vニーディング”(VKD)について、その性能評価を行ったので報告する。図1にVKDとKDの三次元モデルを示す。KDは一般的に各ディスクの山頂部はスクリュ軸方向に平行に設計されるが、VKDの山頂部は順送り方向・逆送り方向にそれぞれ捩じった2種類の形状を組み合わせたV字型となっている。図1 (a)VKDと(b)KDの三次元モデル図2 (a)VKD内および(b)KD内における樹脂流動のイメージ図3 山頂部リードが異なるVKDの三次元モデル図2にVKD内およびKD内における樹脂流動を示す。KDの場合、山頂部上を流動するよりも上流および下流のディスク間の隙間を流動する方が抵抗が小さいため、山頂部上を通過する樹脂量を確保しにくい。一方、VKDの場合、スクリュ回転で生じる樹脂の流れが山頂部によって堰き止められるため、山頂部手前に樹脂溜まりが形成される。この樹脂溜まり内に存在する樹脂は、上流および下流のディスク間の隙間を流動することがないため、山頂部上を通過せざるを得ない。その結果、VKDは、KDよりも高せん断作用を受けた樹脂の割合を高くすることができると期待される。KDは、ディスクの枚数、ディスクの厚み、ディスクのずらし角度、ディスク外径(シリンダ内壁と山頂部のクリアランス)の調整によって混練作用を制御している。一方、VKD内での混練作用は、これらの形状因子に加え、山頂部のV字型を形成する2種類の捩じり量(リード)およびL/D(L:スクリュ長、D:シリンダ内径)にも依存する。VKDにおける山頂部リードは、山頂部のV字型の開度に関わる形状因子であり、捩じりリード(ピッチ)をシリンダ径で除して無次元化した値を用いる。山頂部リードが大きくなるほど山頂部のV字型の開度が大きくなることを意味する。(図3)(a)山頂部リード:3D, (b)山頂部リード:8D日本製鋼所技報No.74(2023.11)技術報告2. VKDの特徴(52)

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