日本製鋼所「技報74号」
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二軸押出機TEX®用特殊混練スクリュ(54)リードは小さい方が、Espが高くなる傾向が見られた。VKDのV字型が鋭利となる山頂部の方がディスク間の隙間の樹脂流動を抑制する効果が高いため、山頂部上を通過する樹脂量の増加が得られることを示唆するものと考える。図7に3種のスクリュ形状をそれぞれ用いた場合の二軸押出機シリンダ内の樹脂およびタルクの可塑化・複合化状況を示す。山頂部リードが8DのVKDを用いたスクリュ1はスクリュ3を用いた場合と可塑化開始点に大差は見られなかった。一方、山頂部リードが3DであるVKDを用いたスクリュ2は、可塑化部の入口から可塑化開始点までの距離がスクリュ3と比較して50 %短縮された。スクリュ1ではVKDの山頂部リードが大きくなると、山頂部のV字型がKDの山頂部に類似した形状になる。これによって、KDのように山頂部の上流および下流のディスク間の隙間を優先的に樹脂が流動するようになるため、山頂部上を通過する樹脂量を増加させる効果が高まらないことに起因すると考える。以上のように、VKDは樹脂の効率的な可塑化に対しても有効であることが判明した。図7 3種のスクリュ形状を用いた場合の二軸押出機シリンダ内のタルク入り樹脂の可塑化・複合化状況本開発では、二軸押出機の新規混練スクリュとして開発したVKDを対象に、その混練性能の評価を検証した。VKDは、通常のKDに比べてより短いL/Dで樹脂を可塑化することができており、スクリュ回転による圧縮とせん断をより効率的に樹脂へ伝達できることが示された。このような混練性能を有するVKDをケミカルリサイクルプロセスに利用することで従来のKDを使用する場合よりも高いエネルギーを樹脂へ伝達することが可能になり、吐出量の向上が期待される。また、VKDは既に多くのコンパウンドプロセスに適用されており、様々なプロセスにおいて高い分散混合性能を発揮し良好な成果を上げているが、今後も引き続きVKDの特徴・効果について定量評価を実施して、VKDの形状の最適化を行い、ケミカルリサイクルを含めた用途拡大に注力していく所存である。TEXは株式会社日本製鋼所の登録商標です。日本製鋼所技報No.74(2023.11)技術報告4. 結  言

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