■は流速ベクトル、ρは密度、■は時間、は圧力、μsは溶媒粘性率、τは応力テンソル、は重力ベクトル、λは緩和時間、μ■は高分子粘性率、■は変形速度テンソルである。本手法の特徴として、(2)式に対流項を含む点にある。ラグランジュ法では粒子(計算点)が移動することで対流項の役割を果たすため、対流項を計算式に含める必要がないと考えられており、従来のMPS法とSPH法も対流項は現れない。この対流項の取扱いが、タイムステップごとに圧力誤差が発生する要因とされており、本手法では対流項を考慮することで、誤差の発生を回避でき計算精度の向上が見込める。2.1 支配方程式MPS法による粘弾性流体の数値シミュレーション2.2 時間進行法と空間離散化圧力振動が生じ予測精度が著しく低下する課題がある。この課題に対して、圧力振動を低減し予測精度を高めるための研究が活発に行われるようになり、中でも最小二乗法を用いる高精度スキームのLSMPS(Least Squares Moving Particle Semi-implicit)法(3)によって予測精度が劇的に向上した。さらに、自由表面に厳密な応力境界条件を課すことができ、自由表面形状を正確に予測できる移動サーフェスメッシュLSMPS法(4)へと発展しており、この移動サーフェスメッシュLSMPS法を用いることで、未だ確立されていない粘弾性流体の解析を高精度に再現・予測することが期待できる。そこで本研究では、移動サーフェスメッシュLSMPS法に粘弾性モデルを適用し、粘弾性流体の挙動を高精度に予測する演算手法を新たに開発したので、その内容について述べる。非圧縮性流体の支配方程式は連続の式とナビエストークス方程式、および粘弾性流体を表す構成方程式としてOldroyd-Bモデル(5)を用いる。自由表面では次式に示す応力の釣り合いを境界条件として与える。は流体周囲の気体圧力、■は外向き単位法線ベクトは気体粘度である。ル、は表面張力ベクトル、(2)ここで、気体密度は無視できるほど微小と仮定すると、(一定)となり、以下の式となる。時間進行法は松永ら(6)によって提案された新たなフラクショナルステップ法を用いる。この手法では、(2)式の対流項を陽的オイラー法にて定式化((6)式)し、粒子移動による速度と応力変化をTaylor展開近似によって求める((11)、(12)式)。具体的な計算手順として、まずは仮速度■*を求める。添字は時間ステップ、Δtは刻み時間である。圧力は圧力ポアソン方程式を陰的に解いて求める。次に、現在位置での新しい時刻の速度テンソル(1)(2)(3)最後に粒子を移動し、新しい位置応力テンソルは近似の次数を決める正の整数、は位置の修正距離である。位置の修正は粒子配置が乱雑になっていくのを防ぐために必要な処理となる。タイムステップごとに流体粒子が移動する際、計算時間の経過とともに粒子の乱雑さが増していき、最終的に数値不安定性や計算誤差に繋がるからである(7),(8)。(4)流体内部粒子の空間離散化には、重み付き最小二乗法を用いたLSMPS スキーム(3)を用いる。標準MPS法は(一定)とを計算する。を求める。日本製鋼所技報No.74(2023.11)と(5)(6)(7)と応力(8)(9)での速度(10)(11)(12)技術論文2. 演算アルゴリズム
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