2.2 タッチ成形技術食品包装向け無延伸シート成形装置の要素技術とAI・IoT技術流路に流した場合、法線応力効果により低粘度樹脂が高粘度樹脂を包み込むような層分布になるため(2),(3)、CEFモデルは包み込み現象を表現できたと考えられる。これらの結果から、CEFモデルを用いた解析により、多層流動の層比の乱れを予測できる可能性が示唆された。このように、当社では、多層化技術のノウハウ構築に加えて解析による理論構築を行っている。無延伸フィルムの成形方法の一つに金属タッチロール法がある(図6)。この成形法はシートの両面を全面密着させるため、急冷却と鏡面転写が可能であり、成形速度も50 m/min程度まで対応可能な成形法である。短所としては、全面密着であるため、偏肉調整がシビアであり、特に0.3 mm以下の薄物成形では密着不良などの成形不良が発生しやすくなる。当社が開発した金属弾性体のタッチロール(JFロール)は、この薄物成形におけるフィルム図4 解析モデル図6 金属タッチロール法図5 解析結果シートの厚みムラに対する追従性、柔軟性に長けた成形ロールである。一般的な金属ロールと異なり溶融樹脂が接触する外筒の内面に円周方向にネジミゾがあり、フラットロールより断面二次モーメントが一桁小さく、ロール幅方向のロール柔軟性が高いことが特徴である(図7)。図8には、冷却ロールとタッチロールで樹脂を狭窄した際の樹脂変形様式を示す。図に示すように、内面にミゾを持たないフラットロールでは幅方向の柔軟性が少ないため、縦縞方向に未圧搾部が生じるが(図8(a))、JFロールはその構造により、シートの厚みムラに対し、均一な成形性能を得ることができる(図8(b))。また、同じ弾性体ロールとして、ロール表面をシリコンやテフロンなどにしたゴムロールがあるが、金属ロールと比べると熱伝導性が悪く鏡面性も劣る。対してJFロールは金属かつ外筒の内側にミゾを持つため、表面積の増加により冷却能力が高く、外筒表面は鏡面の他に梨地、彫刻ロールにも対応できるため適応範囲が広い長所を持つ。また、JFロールの特徴として、成形調整の容易さが挙げられる。一般的に弾性体ロール以外のタッチロール成形では、キャストロールとタッチロールの隙間距離をコッターと呼ばれる平型の楔で微調整する必要がある。この隙間調整は成形するフィルムシートの厚みに合わせて設定が必要であり、左右の厚みバランスに対しても微調整を行わなくてはならない。特に薄物かつ透明性が必要なフィルムシートにおいては均一性を高めるためにこの調整に時間を要する場合が多い。それに対して厚みに対する柔軟性を持つJFロールはコッターなしで成形を行うため、これらの調整作業を大きく軽減できる。その他、JFロールは成形可能な樹脂も多く、薄物ポリプロピレン(PP)からシクロオレフィンコポリマー(COC)などについて納入実績がある。また、ポリメタク図7 JFロールの構造図8 ロール違いによる樹脂変形様式(57)技術報告
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