2.3 AI/IoTを活用したソフトウェア技術(1)押出機の自動立ち上げシステム(ezDRIVERR)食品包装向け無延伸シート成形装置の要素技術とAI・IoT技術(2)完全自動Tダイ(Smart AdjusterTM )(58)リル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリカーボネイト(PC)やポリエチレンテレフタレート(PET)などにも適応可能である。また、シート厚さではPETの0.06 mmからPPで1.7 mmまでの厚み調整が可能であり、JFロールは幅広い原料と厚みに使用できる成形ロールである。無延伸シート成形技術において、人の経験と勘に基づいて成形調整を行う工程が多く存在している。今後の人口減少を想定した品質維持には、AI/IoTを活用した成形調整の自動化が重要である。ここでは、当社が取り組んでいる押出機の自動立ち上げシステム(ezDRIVERR)、完全自動Tダイ(Smart AdjusterTM )について紹介する。図9に押出機立上げのSTEPを示しているが、押出機を立ち上げるには数多くの確認項目と実施項目が存在し、それぞれのステップで、立ち上がりの状態を観察しながら押出機の条件を変更し、装置を立ち上げていく。加えて、シート成形機には付帯装置が多く、押出機だけでなく下流機器への影響も考慮した立上げが必要で、操作や手順を間違えると下流にまで影響を及ぼす大きなトラブルに繋がる。このような課題を解消すべく開発されたのが「ezDRIVERR」であり、その機能の一つに、押出機 先進運転支援(Advanced Driver-assistance Systems:ADAS)が存在する。本機能は、図10に示すように運転に必要なパラメータ(フィーダ合計供給量、Q/Ns、G/P入口圧力SV値や目標圧力値、回転数の加速/減速レート)を予めテーブルに設定することにより、それ以降は、図9 押出機立上げのSTEPボタン一つで押出機や付帯装置が正しい順序で自動的に起動していく。また、押出機がうまく立ち上がらない場合においても、機械保護のインターロックシーケンスを搭載しているため、装置が故障するリスクを回避することが可能である。また、無延伸シート機は多層成形を行うため、複数材の押出機を同時に立ち上げる必要があるが、本機能は、複数台設置についても対応可能であり、各押出機の立ち上げのタイミングを同時にするか、遅らせて起動するかを設定値次第で実現可能である。Tダイ流路は、樹脂の粘度に基づき、Tダイ出口において、幅方向の流速が均一となるように設計を行う。しかしながら、成形中のネックインなどの樹脂の変形特性によって、製品の最終厚みが変化するため、このような特性に応じて、Tダイの厚み調整ボルトで厚みを調整する必要がある。厚み調整に際して、樹脂の流動特性、Tダイの構造ならびに成形中の樹脂変形挙動を理解しなが図10 設定パネル日本製鋼所技報No.74(2023.11)技術報告
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