射出成形機のスマート制御システムにおけるシステム状態値判定(64)このモデルは、Mathworks社のMATLAB、Simulink、Simscape Multibodyを用いて作成した。このモデルでは、ベルトを介してモータ駆動軸の回転を従動軸に伝えている。従動軸にはクランクが連結されており、従動軸の回転に伴ってクランクが回転することによって、ステージが前後へ移動する仕組みとなっている。ステージに載せる重りの質量を調整することによって、クランクおよび従動軸が回転する際の負荷が変化するため、モータ駆動トルクに変化が生じる。このモータ駆動トルクの変化などからステージ上の質量を推定できる。モータ駆動軸の回転角速度制御にはデータベース駆動型Proportional-Integral-Derivative 制御(DD-PID制御)(4)を適用し、その制御結果(図4)を用いてステージ上の質量というシステム状態を提案法で判定する。こ、目標回転角こで、モータ駆動軸の回転角速度を速度を、従動軸の絶対角度を、駆動トルクをとする。評価データベースには、ステージ上の重り質量を0 gから1000 gまで200 gごとに変更した場合の運転データ( )を格納する。表1に提案法の各種設計パラメータを示す。システムの運転状態値の有効数値は、判定性能に影響を及ぼさない値を試行錯誤的に選定した。また、上下限付近の分類を、、、= 0、200、800、1000 gのデータ群とした。図4 DD-PID制御による制御結果表1 提案法の各種設計パラメータ被判定対象データ側では、= 0、100、200、400、500、600、800、900、1000 gについてそれぞれシステム状態値を判定した。さらに、提案法との比較のため、機械学習手法である回帰木を使用したシステム状態値推定を行った。回帰木の推定には、Mathworks社のMATLABの拡張機能であるStatistics and Machine Learning Toolboxを用いて回帰モデルを作成した。回帰モデルの作成には提案法と同じ評価データベースを使用した。図5に提案法によって判定したシステム状態値、および回帰木によって推定したシステム状態値をそれぞれ示す。は、真値と概ね一致する判定結果となった。一方、は= 500 g付近ではとよく一致したが、上下限付近ではとの乖離が大きくなった。上下限付近では、の方がよりもとの乖離が小さくなっていることから、提案法ではロジット変換による効果が得られていることが確認された。図6に提案法によって判定したシステム状態値と真値との絶対誤差をそれぞれ示す。= 100、900 gにおける絶対誤差は、他のにおける絶対誤差に比べて、大きくなる傾向が見られた。これは、評価データベース内に= 100、900 gにおける運転データが存在しないため、= 100、900 gにおけるの算出の際に図5 システム状態値の判定結果図6 絶対値差分結果
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