日本製鋼所「技報74号」
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4.3 検証機の製作図11に、実際に作成したLN/SiO₂/LN接合基板のサンプルの外観写真を示す。LN基板はファインクリスタルいわき社製の両面研磨した1 mm厚 4 inch 基板を用いて、SiO₂膜はECR-CVD装置を用いて無加熱で5 µm成膜している。SiO₂膜の表面を化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing: CMP)で研削後、LN基板を接合し接合強度を高めるために250 ℃で加熱している。他の蒸着等で成膜したSiO₂膜では接合時にボイド等の発生が見られたが、ECR-CVD装置で成膜した接合基板ではボイド等の発生は確認できず、緻密な膜が形成できているといえる。またSi基板だけではなく、化合物基板上でも厚膜のSiO₂膜の成長を確認できたことから、広い用途での適用が期待できる。これらの結果から、開発中のECR-CVD装置は高速成膜と応力制御が可能であり、nmオーダーからµmオーダーまでの膜厚の膜を成膜できる装置として、スパッタ装置との差別化ができると判断した。そのため、ECR-CVD装置の製品化に向けて検証機の製作を行った。図12は2023年3月に完成したECR-CVD装置の検証機である。ロードロック室、搬送室、成膜室を備え、8 inch 基板に対応した装置となっている。成膜室のプラズマ源は、膜分布の均一性向上のために角度を調整した構成となっている。またチャンバークリーニング用にRPS(Remote Plasma Source)を備え、NF₃を用いたプラズマクリーニングも可能である。図10 5 µm厚SiO₂膜を成膜したSi基板の断面SEM図11 試作したLN/SiO₂/LN接合基板今後は本装置にて、成膜の検証を行い、ECRプラズマ技術で新たなアプリケーションへの適用検討を進める。JSWアフティと共同で開発したECR-CVD装置と、その成膜特性について紹介した。開発したECR-CVD装置は、ECRプラズマを用いたCVD装置として、従来のPECVD装置よりも高品質な膜形成が可能であることが確認できた。膜の均一性に課題があったが、プラズマ源と試料位置の最適化を図り、±1 %程度の膜厚分布が達成できることが確認できた。また高速成膜と応力制御の特徴を生かし、これらを組み合わせることでµmオーダーの厚膜成膜を可能とする装置として仕上がった。今回新たに製作した検証機により、これまでECRスパッタ装置では適用できなかったアプリケーションへECRプラズマ技術を適用し、新たな用途探索とECR技術の適用範囲拡大を進めていく。(1) K. Kurata, L. Giorgi, F. Cavaliere, L. O’Faolain, S. A. Schulz, K. Nishiyama, Y. Hagihara, K. Yashiki, T. Muto, S. Kobayashi, M. Kuwata, and R. Pitwon: “Silicon Photonics Micro-Transceivers for Beyond 5G Environments”, Appl. Sci., Vol. 11(2021) No. 22, p. 10955(2) Z. Ren, J. Xu, X. Le, and C. Lee: “Heterogeneous Wafer Bonding Technology and Thin-Film Transfer Technology-Enabling Platform for the Next Generation Applications beyond 5G”, Micromachines, Vol. 12 (2021) No. 8, p. 946(3) D. J. Blumenthal, R. Heideman, D. Geuzebroek, A. Leinse, and C. Roeloffzen, “Silicon Nitride in Silicon Photonics”, Proceedings of IEEE, Vol. 106 (2018) No. 12, pp. 2209-2231図12 新たに製作したECR-CVD装置検証機(71)5. 結  言参 考 文 献技術報告

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