日本製鋼所「技報74号」
78/114

オートクレーブ型LDPEリアクター塔内非破壊検査装置の開発と実用化Ultrasonic Testing)が必要となる。しかしながら、ボディーが細径であるため検査員が入塔できないものや、ボディーがジャケット構造であるためUT検査施工が困難なリアクターが存在する。そこで、このようなリアクターボディー内表面に発生している減肉や亀裂状欠陥を検出する非破壊検査装置を開発して実用化したので、本装置の特徴と利点を紹介する。LDPEリアクターの設計構造は、図1に示すようにジャケットを取り付けた円筒ボディー、その上下の平蓋であるカバーおよびクランプ締結体で構成されている。これらの耐圧部材の材料にはASME規格材であるSA-723M, Gr. 3, Cl. 1もしくはCl. 2相当の4Ni-1½Cr-½Mo-V鋼が広く使用されており、運転圧力は150 MPa~280 MPa、運転温度は約300 ℃、スタートアップ・シャットダウンの回数は30年間の運転で2000回~3000回という仕様になっている。当社のLDPEリアクターの設計構造別の納入実績を図2に示す。ボディー内径が450 mm以下の細径リアクターのSDIにおいては、検査員の入塔による塔内検査作業が困難となるが、その納入基数は62 %を占めている。また、塔内検査作業ができない場合には、リアクターボディーを模擬したキャリブレーションブロックを用いた亀裂状欠陥検出能の検証(1)により、ボディー外面側からのUTがその代替となり得るが、ボディー外面側からのUTができないジャケット溶接付けリアクター図1 オートクレーブ型LDPEリアクター設計構造の概略図基数は納入基数の59 %を占めている。これらの設計構造上の理由から、40年以上稼働しているLDPEリアクターのほとんどは、ボディー内表面に発生した局部減肉や亀裂状欠陥の検出、位置の特定とサイジングのための詳細なSDIの実施ができない状況となっている。さらに、リアクターボディーには、その内外径比が1.6~2.3の厚肉円筒にイニシエーターインレット、ラプチャーディスクや温度計を取り付けるためのクロスボアを多数有している。図3に示す運転圧力241 MPa、運転温度300 ℃で定常運転時の典型的な設計構造のLDPEリアクターボディーにおけるMises応力分布では、クロスボア内面コーナー部で810 MPaの応力集中が発生図3 LDPEリアクター定常運転時(運転圧力241 MPa,運転温度300 ℃)のボディークロスボア内面コーナー部での図2 LDPEリアクター設計構造別納入実績応力集中例日本製鋼所技報No.74(2023.11)技術報告2. LDPEリアクター設計構造上のシャットダウン検査導入における課題(74)

元のページ  ../index.html#78

このブックを見る