日本製鋼所「技報74号」
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オートクレーブ型LDPEリアクター塔内非破壊検査装置の開発と実用化しているのが認められる。このようなクロスボアを有する厚肉の円筒胴体の設計構造に対してASME BPVC Section VIII, Division 3等の超高圧容器の設計・製作規格では、クロスボア内面コーナー部での応力集中や疲労の影響に対して、該当部に想定した割れ(クロスボアクラッキング)の亀裂進展解析により設計寿命を評価することが規定されている。この規定による設計寿命に対して40年以上稼働後の妥当性評価を実施するためには、SDIでのクロスボアクラッキングを検出・サイジング対象とした該当部表面での磁粉探傷(MT : Magnetic Particle Testing)やボディー外面側からのUTが必要となる。また、リアクターボディーには、その外表面にジャケットを隅肉溶接により取り付ける設計構造、もしくは、ジャケット分割部に設けたラグによりボルト締めで取り付ける設計構造が採用されている。前者に関して、運転温度300 ℃でのリアクターボディーにおける温度分布とそれを熱荷重に変換してMises応力分布として表示した結果を図4に示す。ベローズによる熱応力の緩和が作用しているもののジャケット取り付け溶接部で200 MPa程度の熱応力集中が発生しているのが認められ、ジャケットを取り付けるためのバタリングや隅肉溶接部とボディーの接合部が、スタートアップ・シャットダウン運転の繰返しに伴い発生するジャケットの熱膨張と収縮に起因する応力集中と疲労の影響下にあることが分かる。したがって、ジャケット取り付け溶接部からボディー外表面へ進展する割れが懸念されるが、この既設溶接部を起点としたボディー外表面への割れの進展(疲労亀裂進展)をジャケット外表面側から検出しサイジングするのは難しく、そのため該当部内面側からのUTによる探傷が必要となる。さらに、ボディーの素材であるSA-723M, Gr. 3鋼はASME規格において溶接構造物への適用が禁止されており、ジャケット取り付け溶接部にボディーと同等の化学成分、機械的性質を確保できる適当な溶接材料がなく補修溶接施工ができない。そのため、SDIでのジャケット取り外し後の再組み立てが困難であることからも、ジャケットの既設溶接部を起点とした疲労亀裂進展に対するSDIには、ジャケットの取り外しと再組み立てが不要となる該当部内面側からのUTによる探傷が求められる。図4 運転温度300 ℃でのLDPEリアクターボディーの温度分布(上図)とジャケット取り付け溶接部での熱応力集中(下図)の例(75)技術報告

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