MPS法による粘弾性流体の数値シミュレーション3.2 ワイゼンベルグ効果シミュレーション(4)図2に粒子間距離l0=1.25×10-3 m、回転速度Ω = 10 rad/sとした条件での時間ごとの圧力分布と速度分布の予測結果を示す。圧力分布の結果から、流体は重力の作用によって自由表面から底面に向かって圧力が高くなっており、妥当な予測結果が得られている。また、どの時間に対しても圧力振動が発生しておらず、滑らかな圧力分布が得られている。これは粒子配置の乱れに応じた空間離散化が行えているためであり、LSMPSの予測精度の高さが窺える。速度分布については、計算開始から3 秒にかけて、流体粒子が外側円筒に向かうような速度ベクトルとなっており、これは外側円筒の回転によって流体に遠心力が作用しているためと考えられる。その後4 秒から次第に速度が小さくなり、5秒では半径と高さ方向の速度はほぼ0 と平衡状態に達していることが分かる。次に、自由表面形状の理論解と予測結果との比較評価を行った。次式に理論解を示す。は半径位置rでの界面高さ、は初期界面高さである。図3に各解析条件での予測結果とそれに伴った理論解を示す。自由表面形状は、粒子間距離と回転速度Ωを変化させた全4ケースとも予測結果と理論解とで良好な一致が見られ、本手法は高精度の予測が可能である。図2 円筒回転問題の計算結果同心二重円筒間に一定体積の流体を配置し、内側円筒(以下、中心ロッド)を回転させワイゼンベルグ効果のシミュレーションを行った。座標系は2次元軸対称とし、シミュレーションモデルを図4に示す。計算条件は、粒子間距離l0= 1.25×10-3 m、溶媒粘度比率β= (μs⁄(μs+μ■))= 0.5、回転速度Ω= 5 rad/sとし、緩和時間λ=0.1,0.3,0.5 sの3ケースでの粘弾性流体、およびニュートン流体とした。図5にλ= 0.1,0.5 sでの速度場の計算結果を示す。λ= 0.1 sの場合では、中心ロッド近傍で下向きの速度場になっており、液面が低下している。一方λ= 0.5 sでは、中心ロッド近傍で上向きの速度が発生し液面が盛り上がっていることが確認できる。(27)図3 自由表面形状の計算結果と理論解との比較日本製鋼所技報No.74(2023.11)技術論文
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