日本製鋼所「技報74号」
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③UT(FMC/TFM)ユニットオートクレーブ型LDPEリアクター塔内非破壊検査装置の開発と実用化(78)し当て磁粉液を噴射し、ブラックライトの照射によりインディケーションを観察、その寸法を測定する。リアクターの軸方向、周方向、周と軸の中間方向のクロスボアクラッキングをそれぞれ模擬した鋼管でのモックアップによるMTユニットの性能検証例を図10に示す。人工クロスボアクラッキングとそれに対するリアクター周方向に磁化した場合のMT検証画像を比較した。R1 mm長さの軸方向、周と軸の中間方向の人工クロスボアクラッキングが明瞭に検出されているのに対して、周方向の人工クロスボアクラッキングが明瞭に検出されていないのが分かる。したがって、MTユニットにより磁化する方向を逆にすれば、明瞭に検出されるクロスボアクラッキングの方向も逆となるため、クロスボア全周においてクロスボアクラッキングに対する検出能R1 mm長さを確保していることになる。ユニット外観と仕様を図11に示す。ジャケットの既設溶接部からの疲労亀裂進展の検出とサイジングのためFMC/TFMを採用し、高度化されたPC処理により再現性の高い像が得られる。5 mm深さの鋭角ノッチを与えたジャケット溶接取り付け部およびクロスボア部を含むリアクター肉厚断面を模擬したテストブロックを用いて、ユニットに搭載するFMC/TFMに対する疲労亀裂進展の検出能とサイジング能を検証した結果を図12に示す。検証Sスコープではノッチ形状までは再現できないが、ノッチ位置を特定し深さを測定できるのが分かる。このことから、リアクター内面からのFMC/TFMにより、ジャケット既設溶接部からボディー外表面に進展している疲労亀裂に対して、亀裂深さ5 mmの亀裂検出能を有した探傷ができると判断した。図11 UT(FMC/TFM)ユニットの外観と仕様オートクレーブ型LDPEリアクターの設計構造によるシャットダウン検査導入における課題を解決するための塔内非破壊検査装置への要求性能とその検証結果について紹介した。本検査装置の開発により、検査員が入塔できない細径リアクターボディー内部などの以前はアクセスできなかった部位での減肉や亀裂状欠陥を検出し、検出した劣化損傷状態を供用適性評価や追跡調査の対象とすることで、適正な安全性評価が可能となった。本検査装置は既に実用化されており、ジャケットの取り外しと再組み立て、検査員の入塔による塔内検査作業のためのゴンドラの設置といった現地工事が不要となることで、シャットダウン検査期間の短縮(2週間/基)と派遣要員の削減(現場監督1名)にも貢献している。(1) 安富章忠 : “石油精製および石油化学プラントにおける圧力容器の供用適性評価技術(亀裂状欠陥評価方法-第3段階評価)”, 日本製鋼所技報, No.72(2021), pp.80-92図12 UT(FMC/TFM)ユニットの性能検証例日本製鋼所技報No.74(2023.11)技術報告5. 結  言参 考 文 献

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