日本製鋼所「技報74号」
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3.2 押出機-先進操作支援3.3 制御パラメータ自動調整フィルム製造ラインの上流に位置する押出機には、フィーダー・真空ポンプ・ギアポンプ(GP)等、多数の構成装置が付帯される。これらの押出機および付帯装置には、起動順序、制御モードの切替タイミング等、管理すべきポイントが多数存在する。これらの手順を誤ると故障に繋がる恐れがあるため、押出機および付帯装置の立ち上げには細心の注意と高い操作技術・ノウハウが必要となる。この問題への対応として、ezDRIVERには、押出機−先進操作支援機能(Advanced Driver-Assistance Systems:ADAS)が搭載されている。ADASは、フィーダー供給量に関して事前設定された5段階のステップに従って、停止状態の押出機および付帯装置を安定運転状態まで自動で立ち上げる機能であり、各ステップでは押出機先端に設置したGPの入口樹脂圧力の安定性から次ステップへの移行を判定している。もし押出機および付帯装置の立ち上げに失敗した場合であっても、ezDRIVERには機械保護のインターロックシーケンスが搭載されているため、押出機および付帯装置の故障を未然に防止する。ADASはフィルム製造ラインに設置される押出機の台数に制約はなく、押出機の設置台数が多いラインほど、各押出機の起動タイミングの個別調整が可能になる等、導入メリットが大きくなる。図4はADASの紹介資料の抜粋である。"ezDRIVER","J-WiSe","EXANET","      ","      "は株式会社日本製鋼所の登録商標です。図3 ezDRIVERのパラメータ設定画面図4 ezDRIVERに搭載されている押出機−先進操作支援機能(ADAS)の紹介図5 パラメータ調整方法を変更した場合のフィーダー供給量変更フィルム製造ラインの構成装置では、温度制御・圧力制御等をPID制御を用いて行っている。PID制御は、目標との偏差に対して、比例(P)・積分(I)・微分(D)を掛け合わせた演算値で制御する基本的なフィードバック制御である。PID制御の性能はPIDゲインの値によって決定されるが、PIDゲインのチューニングをするには、経験や時間をかけた試行錯誤が必要となる。当社では、熟練作業者の経験と勘の部分を制御に再現した人工知能“Repex Engine”を用いたパラメータ調整制御の開発に取り組んでいる。Repex Engineは自動厚み制御システムに利用されており、すでに“Repex J-TAC”として上市されている。Repex EngineはezDRIVERにも搭載可能である。図5にパラメータ調整方法を変更した場合のフィーダー供給量変更に伴うGPの入口樹脂圧力の推移を示す。ここでは、GPの入口樹脂圧力を一定に維持する制御を行った場合のデータのみを表示することとする。Repex Engineを用いた場合は、手動調整した場合に比べて、押出量を変更した際の圧力変動を抑制できていることが確認できる。温度制御やその他の制御へのRepex Engineの応用展開について、現在、社内で検証を進めている。フィルム製造ラインの各構成装置のパラメータ調整を人間が手動で行う必要がない状態になるのも、遠くない未来である。 4. おわりに今回、ezDRIVERの有する機能の一部を紹介したが、ezDRIVERは現在開発中または今後開発予定の新技術を随時に組み込めるよう、これらの新技術と親和性の高いシステムを設計することを目標としている。ezDRIVERへの機能搭載が増えるにつれて操作性が犠牲になることを回避し、誰でも使いやすいシステムを構築していく所存である。お客様からのフィルム製造ラインの自動化や省人化のニーズに応えることができる製品を開発・提供し、当社のフィルム製造ラインの完全自動化へ向けて主軸となるよう貢献していきたい。に伴うギアポンプの入口樹脂圧力の推移(89)製品・技術紹介製品・技術紹介

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