2. ゴムのリサイクル事情について3. 研究背景技術報告二軸押出機TEXⓇを用いた脱硫技術ゴムは弾性や伸縮性、耐薬品性、絶縁性などの優れた特性を持ち、様々な産業や製品で活用されており、私たちの生活に欠かせない素材である。ゴムは、ゴムの木の樹液であるラテックスを凝固させて加工した「天然ゴム」と、石油やナフサを主原料として化学的に合成された「合成ゴム」の二つに分類される。天然ゴムは世界で年間約1200万トン消費されており、その用途の約7割以上が自動車用のタイヤである。また合成ゴムの消費量は年間約1500万トンであり、合計すると年間約2700万トンにも及ぶ(1)。ゴムの需要が拡大し続ける一方で、廃棄ゴムのリサイクルが大きな課題となっている。廃棄ゴムに代表される廃タイヤは、日本ではその90 %以上がリサイクルされている。しかしその内訳を見ると、6割前後は熱利用(サーマルリサイクル)されている(2)。サーマルリサイクルは、タイヤを焼却させ発生した熱エネルギーを回収し、利用する方法である。廃タイヤをサーマルリサイクルすることで、有限資源である石炭や石油の代替となること、埋め立て処分場の圧迫を軽減できる等のメリットがある一方で、サーマルリサイクルではダイオキシンなどの有害物質を含むガスの発生や、二酸化炭素が排出されることが問題視されている。熱利用に次いで多い廃タイヤのリサイクル手法は原型加工利用(マテリアルリサイクル)である。廃タイヤのマテリアルリサイクルは、タイヤ内のスチールコードや強化繊維などを取り除き、ゴム部分を粉砕し粒状にして、再生ゴムの原料やゴム成形品、舗装材等の原材料として再利用する方法である。再生ゴムは廃棄物となったゴム原料を粉砕し、金属や繊維などの不純物を取り除き、熱および再生材による処理にて可塑性や粘着性を持たせて、原料ゴムとして使用できるようにしたものである。その特徴として、練り時間の短縮、押出作業性の向上など、加工・成形・加硫といった製造工程の効率アップや、コストの削減ができるなどの利点があるが、一般的に再生ゴムは耐衝撃性、圧縮永久ひずみ特性、耐屈曲亀裂性などが未使用原料ゴムに劣ることがある(3)。再生ゴムの脱硫手法には、パン再生法や蒸解法(湿式法)、クレメーター法、ダイジェスター法などが挙げられるが、現在はパン再生法が脱硫手法の主流となっている(4)。パン再生法はオートクレーブと呼ばれる耐圧容器の中で加硫ゴムと再生剤を高温高圧化で反応させることによって架橋を切断する脱硫手法である。しかし、パン再生法は長い反応時間を要し、かつ装置も大がかりなものになるといった問題がある。そこで近年、パン再生法に代わる新たな脱硫手法として用いられるのが、二軸押出機を用いた脱硫手法である。二軸押出機は、シリンダごとに独立して加熱・冷却を制御することが可能であり、かつセグメント式スクリュによる自由度の高い混練特性を持つことから、上述した架橋切断に必要なエネルギーの調整に適した機能を有する。また二軸押出機はヒータの与熱とスクリュのせん断ひずみからなる発熱、スクリュのせん断ひずみによる物理的な引き伸ばしにより、効率よく連続処理できることから、従来の脱硫方式と比較して遥かに生産効率が高い。当社では長年、二軸押出機を用いた脱硫プロセスの混練技術の開発に取り組んできた。二軸押出機による脱硫プロセスの挙動や得られる製品の品質は、対象ゴムの種類や配合物に大きく左右され、その特性はとても複雑である。処理する原料が変わることで生じる混練挙動の変化、例えばエントレイメント現象(排出されるガスの流れによって微小粒子が同伴され排出されてしまう現象)によってベントが不安定になる、製品である再生ゴムの品質が極端に低下する、混練負荷が不安定に変動する、などといった特異な挙動に対処するには、物性や運転安定性との傾向を探索し、架橋切断に寄与するプロセスパラメータを究明し、プロセスの根幹を定量的に理解することで、様々なゴム原料の脱硫にも柔軟に対応できるようになるものと考えている。二軸押出機による加硫ゴムの脱硫プロセスは、図1に示す通り、①微粉砕部、②脱硫部、③脱臭部のそれぞれ役割が異なる三つの構成に分けて考えることができる。① 微粉砕部第一混練部に該当し、供給されるゴム原料を細かく均一化する箇所となる。微粉砕部で加硫ゴムを細かく均等化することで、次工程でムラなくゴムにせん断ひずみを与えることができ、表面が滑らかな再生ゴムを得ることができる。この微粉砕部では、ゴムに無駄な熱を与えないことが重要になる。微粉砕部でヒータ熱やゴム同士の摩擦熱でゴムが加温されると、ゴムに流動性が出るため微粉砕化が困難になるためである。そのため、微粉砕部に適したスクリュ形状は非充満かつロングL/Dの混練部となり、シリンダ設定温度は低い方が好ましい。またゴムは伸縮性の高い原料であるため、微粉砕化するためには最適なスクリュ回転速度が必要になる。② 脱硫部圧縮したゴムにせん断ひずみを与えて、ゴムの架橋切断を実施する箇所となる。脱硫部を通過するゴムの粒径にバラつきがある場合、練りムラが生じて、得られる脱硫品には未脱硫が起因となる凹凸やざらつきが表面に生じることがある。二軸押出機におけるゴムの架橋切断の過不足は、脱硫部の混練時間と混練温度、スクリュによるせん断ひずみが相互に作用することで決定する。混練時間と混練温度はスクリュ(34)
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