日本製鋼所「技報75号」
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技術報告4. 結果、および考察(35)4.1 TEX-FANを用いたシミュレーション二軸押出機TEXⓇを用いた脱硫技術形状で制御することが可能であり、脱硫部を伸ばすほど混練時間は延長され、せき止め作用の強いスクリュ形状を設けることで圧力が高まり、ゴムの圧縮による摩擦熱が増加して混練温度は高くなる。また、混練温度はヒータの設定温度によっても制御することができる。架橋切断はスクリュがゴムを引き伸ばす際のせん断ひずみでも発生しており、ニーディングスクリュのディスク幅が広く、かつスクリュ回転速度が速いほど架橋切断は促進されると考えられる。③ 脱臭部架橋切断時に発生する臭気を取り除く箇所となる。架橋切断が行われると遊離硫黄が生じるが、遊離硫黄は活性が高く、すぐに酸化して硫黄酸化物となるため脱揮により除去できる。臭気の除去が不十分だと内部に臭気が残留し、硫黄臭の漂う脱硫品となってしまう。脱臭部では効率的な臭気の除去を図るため、表面更新と水添脱揮による脱揮を図り、脱揮効率は水添直下の混練部形状や水添量、真空度、シリンダ設定温度に依存する。これらのパラメータは、再生ゴムの残留臭気の程度により調整する。前述の通り、ゴムの二軸押出機による脱硫プロセスの性能は、対象ゴムの種類や配合物に著しく左右される。より幅広い原料に優れた脱硫性能を示すプロセスを構築するには、幅広い原料に対し安定して微粉砕が得られるスクリュ形状が必要であると考えられる。そこで当研究では、この微粉砕部のスクリュ形状を変化させ、微粉砕部通過後のゴム粒子径と、押出機出口で得られる製品のムーニー粘度を比較しその関係を検証し、最適な微粉砕部のスクリュ形状について考察を行った。実験に先立ち、微粉砕部のスクリュ形状について数値解析を行い、混練部の特性を定量的に可視化を行った。シミュレーションには当社製二軸押出機用混練シミュレーションソフトTEX-FANを用いた。図2に示す通り、スクリュ形状は、2種類のゴム微粉砕部の混練部形状とし、比較のため混練部無しの形状についても計算を行った。図1 脱硫スクリュの基本構成Screw A: 混練部を持たないスクリュ形状。(他の2形状Screw B: 送りニーディングを主体に構成された形状。温度上昇は最小限として、原料に最大限の応力を加え、微粉砕化を得ることを狙った形状。Screw C: Screw Bよりも混練部内部の充満率を高め、微粉砕化の促進を狙った形状。 せき止めによって発生するせん断発熱は可能な限り少なく済むようにスクリュの配置を工夫した。また、TEX-FANによる計算条件の詳細については以下の通り。図3に、TEX-FANを用いたシミュレーション結果を示す。それぞれのスクリュ形状において、押出機内部の充満率(Fill Factor)、樹脂温度(Temperature)、および内圧(Pressure)を算出し比較した。混練部を持たないScrew Aの結果では樹脂温度の上昇がほとんど見られないが、全領域にわたって充満率が低く、また内圧も低いことから、EPDM粒子に対しスクリュによるせん断作用が得られないことを示唆している。これに対し、Screw Bでは送りニーディングを中心に構成され、内部の充満率や内圧はScrew Aよりも高くなっており、それに伴い樹脂温度はScrew Aと比較し大きく上昇していることから、EPDM粒子に対しスクリュによるせん断作用が得られていることを示唆している。ただし、依然として充満率が低いことは混練効率の低さを示しており、十分な微粉砕化が得図2 各スクリュの微粉砕部スクリュ形状表1 TEX-FAN 計算条件日本製鋼所技報 No.75(2024.11)と比較のために実施)

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