日本製鋼所「技報75号」
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技術報告食品用二軸押出機による大豆ミート製造プロセスと予測シミュレーション(49)図7に解析条件の設定から結果出力までの手順を示す。原料物性(原料の液体粘度、固体時と液体時の比熱・熱伝導率・融点)、スクリュ構成、プロセス条件(原料供給量、スクリュ回転数、シリンダ温度)を入力し、解析を実行する。出力は滞留時間、充満率、トルク、パワー、固相率(溶融率)、原料温度、圧力およびせん断エネルギーの予測値である。本シミュレーションには、流路メッシュの作成といった作業が不要なので、1ケースの解析時間(入力から解析完了まで)は5分程度であり、解析時間は非常に短い。それゆえ、大豆ミート製造テストを行いながら、シミュレーション結果も参照できるので、無駄なく迅速に品質調整を行うには、非常に有用な優れたアプリケーションである。図8に大豆ミート製造プロセスでのシミュレーション結果の一例を示す。スクリュ構成は全長L/D = 21(Lはスクリュの実長、Dはシリンダ径、L/Dは無次元スクリュ長を意味する。)であり、原料投入部から水分添加後の混合ゾーンまで含めた搬送ゾーン、その下流が加熱・混練ゾーン、さらに押出機出口までが冷却・押出ゾーンという構成である。加熱・混練ゾーンでは、高充満率部の原料圧力が高まり、混練が促進されることによって、原料温度の大幅な上昇と固相率の低下が生じ、溶融が進行している。また、高充満率部ではスクリュ回転によるせん断エネルギーが高く、原料に対して混練作用が効果的に働いているので、添加した水の混合と大豆タンパク成分の組織化が進行していると推察される。その後、原料は冷却・押出ゾーンを経て押出機先端に到達している。このようなシミュレーションを有効に活用することによって、大豆ミート製造プロセス条件の改善や最適化を効果的に行えるだけでなく、廃棄物量の削減や省エネなど副次的なメリットもあると考えられる。図7 解析条件の設定から結果出力までの手順(混練プロセス解析ソフトウェア「TEX-FAN」(15))図8 大豆ミート製造プロセスでのシミュレーション結果の一例日本製鋼所技報 No.75(2024.11)

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