日本製鋼所「技報75号」
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9. 考  察技術報告コンター法を用いた残留応力測定におけるFEMモデルの簡略化検討ここで、モデル簡略化の影響を評価するため、評価区間の応力分布の指標E(式(1)~式(4)、図16)を定義し、O-Cの各区間および全区間でE値を算出した(表2)。なお、表中の数値は元モデルの評価値で規格化した。ここで、各変数は以下の通り。E:各区間での評価値L:各区間の距離SK:各評価点での評価値σOK:元モデルでのσKσSK:簡略化モデルでのσKσi:解析の応力値σK:隣接2点間における解析の応力平均値ΔLK:隣接2点間の距離Yi:点Oを基準とした測定点のY座標図16 評価指標Eに用いる各変数の模式図(O-C間の場合)表2より、O-C間において、元モデルと短縮化35 mmモデルおよび単純押出35 mmモデルの評価値の比較より、これらの簡略化モデルは元モデルとほぼ同等の結果となった。他方、短縮化10 mmモデルおよび単純押出10 mmモデルは全区間において、評価値が悪化した。コンター法では、切断面の変形に重大な影響を与える領域内で、試験片の剛性が対称であることが要求される。この仮定は切断表面からサンブナンの代表長さの1.5 倍を超えない範囲まで拡張することができる(1)。代表長さは多くの場合、試験片の厚さで、最大断面寸法を採用することが望ましいといわれ(1)、各押出10 mmモデル長さはこの仮定を満たすが、今回の試験片は薄板(3mm)であるため、厚さの3倍以上のモデル長さであっても、モデル長さが不足していたと推測される。これらのことから、最大変位の約330μmの約100倍以上である35 mmモデルであれば、元モデルと同等の解析結果となることが示唆されたが、短縮化の下限については今後の検討が必要であると考えられる。また、元モデルと単純押出モデルのX軸方向応力と評価値を比較すると、単純押出モデルにおける応力値が元モデルより低く、また評価値も1.00を下回っている。これは、変位分布を付与する方向に対して、元モデルには曲率が存在していることに起因すると考えられる。従来のコンター法の拘束条件では、解析時の曲がり変形や回転の影響が大きいが、単純押出モデルは曲率を考慮していないのでそれらの影響が小さく、評価値に差が生じたと考えられる。そのため、今回のような曲率をもつ薄板モデルでは、より最適な解析条件の検討が必要であると考えられる。表2 元モデルに対する簡略化モデルの評価値(58)

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