技術報告10. 結 言(59)参 考 文 献コンター法を用いた残留応力測定におけるFEMモデルの簡略化検討そして、各短縮化モデルと各単純押出モデルを比較すると、全区間であるO-C間と溶接部直下のA-B間では、各単純押出モデルのほうが同じ長さの各短縮化モデルよりも評価値が良好であるが、溶接部近傍のO-A間とB-C間では各短縮化モデルのほうが評価値は良好であった。これらのことからも、モデルの曲率の影響を示唆しているが、曲率の大きさやモデル長さによって変化するため、これらの定量的評価も今後の課題である。本報告では、溶接後の薄板試験片に対してコンター法を適用し、中央断面近傍でのX軸方向の残留応力分布を評価した。また、薄板試験片が座屈して曲率をもっていたことから、複雑なモデルであるととらえ、本モデルの簡略化した際の影響について検討した。主な結果を以下に示す。1)本試験片に対しコンター法を適用した結果、溶接部表面側に引張応力の再現や、裏面におけるX線応力測定結果と定性的な一致が認められた。2)単純に長さ方向を短縮化する簡略化の場合、最大変位分布の約100倍以上の長さを確保したモデルであれば、短縮化前と同等の結果が得られることが示唆されたが、短縮化の下限については今後も検討が必要である。3)今回のような曲率をもつ薄板モデルで通常のコンター法と同様の拘束条件で解析した場合、曲がり変形や回転の影響が大きくなることが懸念されたため、より最適な解析条件の検討が必要である。4)各短縮化モデルと各単純押出モデルの比較より、今回のモデルでは曲率が評価値に影響していることが示唆されたが、モデルによって曲率の大きさや長さが変化するため、異なるモデルでの短縮化や単純押出の検証を通して、簡略化時の影響の定量的評価が今後の課題である。(1) Michael B. Prime and Adrian T. DeWald: Practical Residual Stress Measurement Methods, “The Contour Method” , pp. 109-138, (2013)(2) 高倉 大典, 深澤 大志:コンター法による部材内部の残留応力測定技術, IIC REVIEW No.62, pp. 38-44(3) 寺崎 俊夫:3-4 溶接変形と残留応力, 溶接学会誌, 78巻(2009) 2号, pp. 139-146(4) 独立行政法人原子力安全基盤機構: “複雑形状部機器配管健全性実証(IAF)事業 原子炉圧力容器の異材溶接部に関する高温材料特性データ集” , p21 , (2013)日本製鋼所技報 No.75(2024.11)
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