技術報告1. 緒 言(61)ロータ表層のUT欠陥自動検出モデルの開発当社が製造する発電所向けタービンロータ軸材(ロータ)では、製造中の内部品質を評価するために、非破壊検査の一つである超音波探傷検査(UT)が行われる。検査員が探触子を手で動かしながら走査する手動探傷では、検査に時間を要することと、熟練した技術が必要となる。そこで当社では、検査工程のリードタイム短縮や省人化を目的に、図1に示す自動UT装置(TUROMAN5, Actemium Cegelec製)を導入している(1),(2)。探触子をロータ表面と接触させた状態でロータを回転させ、探触子の位置をマニプレータで微調整しながら、連続的に検査データを取得する。自動UT装置では最大φ3000 mmまでのロータの内部検査を実施できるが、本稿では表層約120 mm範囲を探傷する表層UTを検討対象とした。自動UT装置から得たエコー波形の一例を図2に示す。図2(a)に示すA-Scanと呼ばれるエコー波形に着目すると、欠陥(ind.)エコーの近傍に表層特有の疑似エコーが認められ、欠陥の判定を難しくする一因となる。図2(b)はA-Scan を周方向に連結してエコー高さで表示したB-Scan画像であり、図中の赤枠部が欠陥を表す。検査員は部材全体のB-Scan画像、およびA-Scanのエコー高さから、欠陥を判断する。ここで、B-Scan画像はロータの軸方向に沿って複数枚収録され、検査条件やロータの長手寸法によるが、その枚数は1000枚以上になる。そのため、画像の確認作業に時間を要することが課題であった。UT検査に機械学習を適用した事例は、これまでにいくつか報告されている(3),(4)が、材料や欠陥種別が多様であること、画像の規格も現場によって異なること等が要因で、機械学習に必要な計測データを集めることは容易ではない(5)。この問題は、自動UT装置によって大量の探傷画像を収集することで解決が見込まれる。本稿では、検査員の作業負荷の軽減を目的に、B-Scan画像中の欠陥を自動で検出する機械学習モデルを開発し、実機部材を用いてその予測精度を検証した。図2 欠陥部におけるエコー波形の一例図1 タービンロータ軸材の自動UT装置日本製鋼所技報 No.75(2024.11)
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