日本製鋼所「技報75号」
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2. 欠陥自動検出手法技術報告2.1 処理フローの概要ロータ表層のUT欠陥自動検出モデルの開発2.2 CNNの学習条件機械学習による画像認識の手法は、画像分類、物体検出、セマンティックセグメンテーションに大別される。図2に示したように、B-Scan画像には判別が難しい疑似エコーと欠陥エコーを含むため、物体検出で欠陥を識別するアプローチは困難と考えられる。また、欠陥エコーはB-Scan画像サイズに対して非常に小さく、セマンティックセグメンテーションによるラベリングは容易ではない。以上を踏まえて、欠陥検出の機械学習モデルは、ルールベースによる判定と、画像分類手法の一つである畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を組み合わせたものとした。機械学習モデルの開発には数値解析ソフトウェアMATLAB R2022aを使用した。本モデルの欠陥評価フローを図3に示す。まず、自動UT装置から取得した検査データを入力データとして扱い、B-Scan画像を読み取る。このとき、平均エコー高さに閾値を設けて、明らかなエラー画像は除外した。B-Scanのデータサイズは、ロータの直径や自動UT装置の測定間隔に依存して変動する。そこで、B-Scan画像を画像データとして読み取りやすくするために、データサイズの補正、RGB変換等の前処理を行った。図3 欠陥評価フロー続いて、データ処理後の画像に対してルール判定を適用し、欠陥の候補を抽出した。図4に示すように、ここでは周方向のラインごとにエコーが高い領域を判定し、径方向に連続的に走査することで欠陥領域を検出する。さらに、得られた欠陥領域ごとに最大エコー高さを算出し、検出目標であるφ0.8 mmの欠陥サイズをエコー高さ100 %として、エコー高さ40 %以上の欠陥のみを検出した。最後に、ルール判定のみでは欠陥数を過大に見積もることから、CNNを用いて欠陥を絞り込んだ。以上の処理フローによって、検査データ中の欠陥座標およびエコー高さの一覧が出力される。CNNの学習用データセットの作成にあたり、まず実機ロータ4部材のB-Scan画像から、検査員の判定結果を基に正解(欠陥)のラベル付けを実施した。正解ラベルの一例を図5に示す。図中の赤枠部は、検査員が評価した欠陥領域を表しており、ボックスラベルのサイズを128 pixel × 128 pixelとした。また学習データには、最大エコー高さが20 %以上の欠陥のみを扱った。図6のように、学習用データセットには上記の正解ラベルに加え、ランダムに抽出した健全画像および疑似エコー画像を使用した。ここで、データセットに疑似エコーを与えた理由は、疑似エコーが欠陥として誤検出されることを防ぐためである。CNNの学習条件を表1に示す。学習モデルにはGoogLeNetを適用し、初期10層のパラメータは凍結して最図4 ルール判定の概略図(62)

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