製品・技術紹介 1. はじめに近年、車両の製造コスト低減や軽量化による燃費向上などのために金属製部品から樹脂製部品へ素材転換が進んでいる。例えば、強度・耐熱性が必要な部品には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリアミド(PA)とガラス繊維(GF)などを複合化したコンパウンド樹脂の射出成形品が使用されている。これらコンパウンド樹脂の成形では、樹脂中のGFや添加剤などの摩耗・腐食成分によって引き起こされる、スクリュ・シリンダの摩耗が問題となっている。当社は、この問題への対応のために、GF含有量30 wt%~50 wt%のPAコンパウンド樹脂およびPPSコンパウンド樹脂に対して、高い耐摩耗性・耐食性を有するとともに、コスト競争力に優れる“N3000Gシリンダ”(1) をシリンダ内径18 mm~46 mmの横型射出成形機および竪型射出成形機を対象に販売している(表1)。本稿ではN3000Gシリンダの実用例について紹介する。 2. N3000Gシリンダの特徴射出成形機では、樹脂によるシリンダ内面の摩耗と腐食を防止するため、金属製シリンダの内面に厚さ2 mm~3 mmのライニング層を持つバイメタルシリンダを採用することがある。当社の射出成形機の標準シリンダであるN2000Fシリンダおよび今回紹介するN3000Gシリンダもバイメタルシリンダである。高い摩耗性・腐食性を有するコンパウンド樹脂の成形では、樹脂中の腐食成分によってシリンダ内面が腐食し、摩耗成分によって削り取られる。その後、露出した表面が腐食される、という繰り返し(いわゆる腐食摩耗)によって、シリンダ内面の摩耗が進行する。例えば、PPSやPAの成形では図1に示すように、樹脂の投入口(ホッパ口)近くのシリンダ内面が大きく摩耗するケースがある。この場合、摩耗が進行すると、可塑化時間のばらつきが生じ、次第に可塑化時間が延び、最終的に成形品の品質不良や成形サイクルの延長による生産性の低下といった悪影響がもたらされる。シリンダ内面の摩耗がライニング層を超えてシリンダ母材にまで達すると、シリンダ母材が欠落して成形品に混入する恐れもある。N2000Fシリンダのライニング層はNi基合金に特殊炭化物を分散させることによって耐摩耗性・耐食性を発揮させている。他方、N3000Gシリンダのライニング層はさらに耐食性に優れた合金成分と耐摩耗性に優れる硬質粒子を採用しているので、N2000Fシリンダに比べて耐摩耗性・耐食性ともに向上している。(69)表1 N3000Gシリンダ対応機種図1 シリンダ内面摩耗模式図日本製鋼所技報 No.75(2024.11)製品・技術紹介高耐摩耗・耐食“N3000Gシリンダ”の紹介高耐摩耗・耐食“N3000Gシリンダ”の紹介
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