日本製鋼所「技報75号」
73/86

 3. N3000Gシリンダの使用例図2にN2000FシリンダおよびN3000GシリンダをJT40RAD-55V型射出成形機(シリンダ内径28 mm)に搭載して、GF40 wt% + ミネラル20 wt%を含有したPPSコンパウンド樹脂を約45万ショット成形したときの1ショット当たりのシリンダ内面摩耗量の比較結果を示す。N2000Fシリンダに比べて、N3000Gシリンダの摩耗量は28 %低減された。また、図3ではN2000FシリンダおよびN3000GシリンダをJ220AD-460H型射出成形機(シリンダ内径53 mm)に搭載して、ミネラル40 wt%を含有したPA6コンパウンド樹脂を約13万ショット成形したときの1ショット当たりのシリンダ内面摩耗量の比較結果を示している。N2000Fシリンダに比べて、N3000Gシリンダの摩耗量は63 %低減された。当社技報No. 65掲載の技術報告(1)では、N2000Fシリンダに比べてN3000Gシリンダが高硬度であり、砂摩耗試験における摩耗体積も小さいことが報告されている。本検証の範囲においても、N2000Fシリンダに比べてN3000Gシリンダは高い耐摩耗性を有していることが、実際の成形にて確認された。これはN3000Gシリンダの成分設計および従来とは異なる硬質粒子が効果を発揮した結果と考える。ただし、コンパウンド樹脂のマトリックス樹脂の種類や、コンパウンド樹脂中のGFや添加剤などの種類や添加量によって、摩耗性・腐食性が異なることが考えられるため、N3000Gシリンダの使用によって、今回紹介した実用例と同等の耐摩耗性が常に発揮されるわけではないことには留意が必要である。今後、N3000Gシリンダを適用するコンパウンド樹脂の種類を拡大して、N3000Gシリンダの適用実績の構築を図っていく。 4. おわりに実際のPPSコンパウンド樹脂およびPAコンパウンド樹脂の成形において、N3000GシリンダはN2000Fシリンダよりも耐摩耗性・耐食性に優れた長寿命シリンダであった。現在は、内径が18 mm~46 mmの射出成形機に限定してN3000Gシリンダの販売を行っているが、今後はさらに大型の射出成形機にも対応できるよう開発活動に邁進する所存である。参 考 文 献製品・技術紹介(1) 千村禎, 荒井朗, 近藤裕直, 井上哲也, 山下泰祐: “射出成形機および押出機用高耐食・耐摩耗シリンダの開発” , 日本製鋼所技報, No. 65 (2014), pp. 95-101図2 1ショット当たりのシリンダ内面摩耗量の比較(GF40 wt% + ミネラル20 wt%含有PPSの成形)図3 1ショット当たりのシリンダ内面摩耗量の比較(ミネラル40 wt%含有PA6の成形)(70)製品・技術紹介

元のページ  ../index.html#73

このブックを見る