製品・技術紹介 1. はじめに近年のCO2に代表される温室効果ガスの排出削減に向け、自動車分野では、燃費向上のために軽量化材料を採用するマルチマテリアル化が進行している。中でも、マグネシウム合金(以下、Mg合金)は、実用金属中もっとも軽量で、放熱性、電磁波シールド性も兼ね備えた、マルチマテリアル化に欠かせない素材の1つであり、軽量化の効果が大きい大型部品でMg合金の需要が増加している。今後、市場拡大が期待される自動車部品分野では、成形品のコストとその因子となる生産効率が重視されるため、コスト低減と生産効率の向上に関する成形技術の開発を進めていく必要がある。また、SGDsの観点からも材料歩留まりの向上は自動車メーカーだけでなく、市場全体から求められている。その需要に応えるため、材料歩留まりと生産性の向上、成形品大型化、複数個取りに効果のあるチクソモールディング機(写真1)用ホットランナー(以下、MGHR)を開発したので紹介する。 2. MGHRの概要(1)MGHRとは、チクソモールディングにおいて成形品へMg合金を流すためのスプルー・ランナーを溶融した状態で保ち、成形品のみを取り出す技術のことを指す。図1はMGHRの3Dモデルを示す。MGHRのシステムは成形品側にMg合金を供給する「ノズル」、ノズルまでMg合金を分岐させる「マニホールド」、ヒーター、熱電対等の電子部品で構成される。温度制御用のコントローラーでこのヒーターに電流を流し、ノズルとマニホールドの昇温と温度の管理を行い、1)材料歩留まりの向上(75)写真1 チクソモールディング機の外観Mg合金の溶融状態を保つ。ホットランナー(図2)はスプルー・ランナーを出さないという特徴から、「ランナーレス成形」とも呼ばれることもある。ホットランナーの対義的な技術としてコールドランナー(図3)がある。成形品へMg合金を流すためのスプルー・ランナーも金型内で冷却され、成形品と共にスプルー・ランナーも取り出す。ホットランナーのようなユニットや設備が不要なため初期費用は安価であるというメリットがあるが、一方で成形の1回ごとに無駄なスプルーやランナーが多く排出され、その処理に手間とコストがかかる。そして何よりも成形品1個当たりの材料費が増えるといったデメリットがある。 3. MGHRの効果MGHRは、従来のコールドランナーと比べてランナーを溶融状態に保つことで、無駄なランナーが出図1 チクソモールディング機用ホットランナーの3Dモデル図2 ホットランナー成形品イメージ図3 コールドランナー成形品イメージ日本製鋼所技報 No.75(2024.11)製品・技術紹介チクソモールディング機用ホットランナーの開発チクソモールディング機用ホットランナーの開発
元のページ ../index.html#78