日本製鋼所「技報75号」
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参 考 文 献製品・技術紹介2)投影面積の低減3)流動性の向上ならびに圧力損失の低減4)成形品変形量の低減5)CO2排出量の抑制ないという特徴がある。写真2にMGHRの成形品、写真3にコールドランナーの成形品を示す。両方とも製品部の形状は同じであるが、ショット重量はコールドランナーが723 gに対して、MGHRは612 gであり、MGHRの成形品は1個当たり15 %の歩留まりが向上する。成形品1個当たりのコストもMGHRの成形品のほうがコールドランナーより約8.8 %低いと試算された。上記の通り無駄なランナーがなくなるため、ランナー部分の投影面積が低減する。コールドランナーの成形品(写真3)の投影面積が1202㎠ に対し、MGHRの成形品(写真2)の投影面積は1005㎠ であり、MGHRの成形品は1個当たり16 %の投影面積が低減する。すなわちコールドランナーで成形する場合は、チクソモールディング機の必要型締力が8,500kNに対し、MGHRで成形する場合の必要型締力は6,500kNとなり、成形に必要なチクソモールディング機のダウンサイジングが可能になる。コールドランナーでは、スプルー・ランナー部分から温度低下が始まる関係上、成形品までのMg合金の流動性が悪く、圧力損失が起きやすい。対してMGHRは、成形品の手前までMg合金の溶融状態を保つことができるため、流動性が良く、圧力損失も最小限に抑えることができる。図4はMGHRによる成形品(a)とコールドランナーによる成形品の変形量(b)を表したものである。コールドランナーによる成形品両端の変形量が多いのは、ランナーの凝固収縮が大きいために成形品の両端が変形するためである。MGHRによる成形品は無駄なランナーがないため、凝固収縮による影響を受けない。したがってコールドランナーによる成形品と比べて変形量が少なく、高品質な成形品を提供できる。MGHRによるCO2排出量への影響は大きく分けて2つある。1つは無駄なランナーが発生しないため、ランナーをリサイクルするための搬送、分別、再溶解、冷却などに必要な多くのエネルギーすなわち電力を削減することでCO2削減につながる。もう1つは投影面積の低減によりチクソモールディング機のダウンサイジングが可能となり、成形に要するエネルギーが低減する。したがってMGHRによる成形で無駄なランナーを発生させないことはCO2排出量の抑制に対して有力な手段であり、地球環境にやさしい技術である。 4. おわりにプラスチック射出成形では、ホットランナーが広く実用化されているが、チクソモールディング機では、ほとんど実用化されていないのが現状である。今後も自動車分野をはじめ、大型Mg合金部品の需要はますます増えていくことが予想される中で、近年の地球環境を考慮したエコロジー意識の高まりから、省材料、省エネルギーを志向した生産手段の1つとしてホットランナーの需要も高まることが予想される。今後も、市場の要求に応えられるMGHRの技術開発を進め、MGHRの普及を通して、チクソモールディング機の拡販、低炭素社会への実現に貢献していく所存である。(1) FI SA(株).“ホットランナーとは”.   https://www.fisa.co.jp/molding_term/hot_runner.html,(参照2024-05-07)写真2 MGHR成形品写真3 コールドランナー成形品図4 成形品の変形量(76)製品・技術紹介

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