製品・技術紹介2.2.2 表面デバイス面への損傷回避2.2.3 ヒューム処理と状態観察パワー半導体向けのレーザアニール装置では、一般的にUVまたはグリーンの波長が使用されている。UVは、グリーンよりも金属膜への吸収率が高いため効率的にアニールすることができる。また、ナノ秒オーダのパルスレーザにより、非照射面への金属パターン等への熱の影響を小さくできるため、熱伝導の高いSiC基板においても非照射面のデバイス面への熱影響を低減できる。図3に、エキシマレーザ照射時の深さ方向の温度分布をシミュレーションした結果を示す。図3上図は最高温度時の断面の温度分布の様子を示しており、下図は深さ方向の温度分布を時間毎にプロットしたグラフとなる。金属膜とSiCの界面で1000 ℃に到達する熱量を与えた際も、表面から150 μmの箇所で低温を保っていることが分かる。A-LA装置ではウエハのレーザ照射時にSi、 C、 金属膜成分がヒュームとして発生し照射エリア周辺に飛散するため、ヒュームによるチャンバー内汚染による機器および計器類の不具合発生や、通常よりも短いサイクルでの機器メンテナンスを要する場合がある。当社ではヒュームが発生するプロセスであるFilm Laser Cutting (FLC)装置およびLaser Lift Off (LLO)装置で培った技術をA-LA装置に適用したヒューム回収機構を有しており、図4のごとくレーザ照射により発生したヒュームを散乱させずに排気する構造により、チャンバー内のヒューム図3 レーザ照射時の深さ方向の温度プロファイル汚染を低減している。また、ヒュームにより汚染されやすいレーザ照射付近のレーザ照射窓においても、レーザ照射窓直下にヒュームが接近しにくい流れ場を形成することで、クリーニングや部品交換などのメンテナンス周期を長期化させた。A-LA装置は、レーザおよび照射窓の状態をビームプロファイラなどの光検出器で自動的に逐次観察する機能(図5)を備えている。プロセスに影響するビーム状態を自動計測することにより、ビーム形状の変化からメンテナンスの実施要否が自動的に報告されるシステムが構築されており、オペレータの知見やレベルによらないシステムとなっている。長期的にヒュームの影響や素子の劣化具合の状態変化を監視することで、適切なタイミングで保守点検が可能である。 3. おわりに当社は、パワー半導体におけるオーミックコンタクト化工程に適した高生産性かつ高機能化したA-LA装置を製品化した。そして、プロセス条件の工夫により更なる高生産性が見込まれるため、継続的な技術開発を進めていく。今後も継続して、様々なアプリケーションに対応したレーザ熱処理装置の開発・製品化を行っていく所存である。図4 ヒューム回収機構の気流解析図5 ビームプロファイル計測画面(80)製品・技術紹介
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