日本製鋼所「技報76号」
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技 術 論 文7. 結  言参 考 文 献基板反転および基板昇降機構を搭載したフォトニクスデバイス用 ECR スパッタ装置の開発(15)日本製鋼所技報 No.76(2025.11)表 3 AR および HR の膜構造と成膜条件図 11 中心波長 450 nm 狙い反射率 (a)AR 膜、(b)HR 膜図 10 に AFTEX-6500 の基板搬送系を示す。省スペースとプロセス時間の短縮を目的に、ロードロック室(Lode Lock Chamber:LLC)は基板のセットアップ部、基板搬送機構、基板反転機構で構成されている。AR と HR を真空一貫で成膜する手順を①〜⑨に示す。① 大気状態で LLC 内のセットアップ部に基板を入れ真空排気を行う。② 基板搬送機構により、基板を SPC に搬送する。③ SPC 内で基板を回転移動して、各 ECR プラズマ室(ECR1、ECR2)にて AR を積層成膜する。④ 成膜完了後に、基板搬送機構により、基板を LLC に搬送する。⑤ LLC 内部の昇降機によって、基板を反転位置に移動し、基板反転機構により反転する。⑥ 基板搬送機構により、反転した基板を SPC に搬送する。⑦ SPC 内で基板を回転移動して、各 ECR プラズマ室(ECR1、ECR2)にて HR を積層成膜する。⑧ 成膜完了後に、基板搬送機構により、基板を LLC に搬送する。⑨ 大気解放を行い、基板をセットアップ部から取り出す。製造プロセスへの耐久性を調査すべく、基板反転機構を用いた AR および HR の連続成膜を行った。表 3 にターゲット波長(λ)450 nm に発振波長を持つ EEL を想定した AR および HR の膜構造と成膜条件を示す。本試験では、LLC にセットした基板を SPC に搬送し、ECR1 およびECR2 にて AR を成膜した後に LLC に搬送、基板反転機構を用いて真空中で反転を行いSPCに搬送、HR を成膜した。成膜した 35 枚の基板は、分光光度計(日立ハイテクアナリシス製 UH4150)にて反射率を測定し、各基板のバラつきを評価した。図 11 に基板反転機構を用いて AR 膜と HR 膜を連続成膜した結果を示す。図 11(a)は AR 膜、図 11(b)は HR膜の分光特性である。波長 450 nm における AR 膜の反射率のバラつきは± 1.2 % であり、HR 膜の反射率のバラつきは± 1.4 % であった。この結果から、再現性がよくAR 膜と HR 膜の成膜ができることが分かった。JSW アフティ社と共同で開発した基板反転および基板昇降機構を搭載したフォトニクスデバイス用 ECR スパッタ装置(AFTEX-6500)の機能および成膜特性について紹介した。開発した基板昇降機構により、T-S 間距離とイオン電流密度、面内膜厚均一性を変化させることが可能であり、微細な膜厚制御ができた。また、基板反転機構を使用することで、真空中にて自動で基板反転ができるため、プロセス時間が短縮し、同時に省力化を実現した。新規開発した本装置はフォトニクスデバイスメーカに納品されており、今後とも顧客要望に応える装置として開発を進めていく。(1) Expected growth of EEL market, Source Edge Emitting Lasers report, Yole Intelligence (2022)(2) Edge Emitting Laser Global Market Report, The Business Research Company (2025)(3)  S. Matsuo and M. Kiuchi: “Low Temperature Chemical Vapor Deposition Method Utilizing an Electron Cyclotron Resonance Plasma,” Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 22 (1983) No. 4A, pp. L210-L212(4) T. Ono, C. Takahashi and S. Matsuo: “Electron Cyclotron Resonance Plasma Deposition Technique Using Raw Material Supply by Sputtering,” Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 23 (1984) No. 8A, pp. L534-L536(5) 鳥居博典 他 : “ 固体ソース ECR プラズマ装置の電子デバイス向け保護膜への応用 ” , 日本製鋼所技報 , No. 66(2015) , pp. 142-148

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