日本製鋼所「技報76号」
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技 術 報 告4. 検討結果、および考察二軸押出機 TEX® を用いた脱硫技術3.3 昨年の取り組み成果ゴムの二軸押出機による脱硫プロセスの性能は、対象ゴムの種類や配合物に左右される。より幅広い原料に優れた脱硫性能を示すプロセスを構築する前提として、幅広い原料に対し安定して微粉砕が得られる微粉砕部のスクリュ形状が必要である。昨年度の研究において微粉砕部のスクリュ形状を様々に変化させ、微粉砕部通過後のゴム粒子径と、押出機出口で得られるサンプルのムーニー粘度を比較し、これらの関係を検証することで最適な微粉砕部のスクリュ形状について考察を行った。その結果、微粉砕部に適度に抵抗スクリュを配置したスクリュ形状が最も高い微粉砕効果を示し、ゴム粒子へのせん断作用や温度上昇の点で脱硫処理に最も有効であることが明らかとなった。4.1 検討方針昨年の検討では、第 1 混練部における微粉砕工程に着目しスクリュ形状の最適化を行い、一定の成果を得た。これを踏まえ、今回の検討ではその次のステップとして、脱硫部における混練条件、特にスクリュ形状の最適化に焦点を当てた。また、その形状を検討するため、テストに先立ち、二軸押出機用混練シミュレーションソフトTEX-FAN による数値解析を実施し、複数案を選定した。なお、前回の取り組みにおいてはムーニー粘度を指標として脱硫の進行度を評価していたが、その評価方法では主鎖切断との識別が困難な場合もあり、評価の精度に課題が残っていた。そこで今回は、より定量的かつ信頼性の高い評価を行うため、トルエンによる膨潤試験を実施し、ゾル分率、膨潤度、および分子量分布を測定し、脱硫の進行度を多角的に評価した。4.2 検討に用いたスクリュ形状今回の脱硫部の検討に用いたスクリュ形状を図 2 に示す。本研究では、異なるコンセプトに基づく3 種類の脱硫部スクリュ構成を比較対象とした。具体的には脱硫反応において原料に与えるせん断エネルギーの種類を、チップクリアランス、(19)日本製鋼所技報 No.76(2025.11)図 1 脱硫スクリュの基本構成化することで、次工程でムラなくゴムにせん断ひずみを与えることができ、表面が滑らかな再生ゴムを得ることができる。この微粉砕部では、ゴムに無駄な熱を与えないことが重要になる。微粉砕部でヒータ熱やゴム同士の摩擦熱でゴムが加温されると、ゴムに流動性が出るため微粉砕化が困難になる。そのため、微粉砕部に適したスクリュ形状は非充満が得られる長い混練部であり、シリンダ設定温度は低い方が好ましい。またゴムは伸縮性の高い原料であるため、微粉砕化するためには高いスクリュ回転速度が必要になる。② 脱硫部圧縮状態のゴムに熱とせん断ひずみを加えることで、架橋構造の切断を促すのが二軸押出機における脱硫部の基本原理である。架橋切断の程度は、脱硫部の混練部長さを延ばすことで混練時間を確保し、また背圧の強い形状を設けることで圧力と摩擦熱が上昇するなど、脱硫に必要なエネルギーをスクリュ形状の工夫によって達成するが、この工程では原料に対して過不足のないせん断応力および熱エネルギーを安定的かつ均一に付与することが求められる。エネルギー付与に偏りが生じると、局所的な混練の過剰や不足を招き、主鎖切断の進行や脱硫の不完全化といった品質劣化の要因となる。 したがって、脱硫部では、過不足のないエネルギーを付与することに加えて、混練の均一性を重視したスクリュ形状と運転条件を最適化することで、原料全体に均質な処理環境を構築することが重要である。③脱臭部架橋切断時に発生する臭気を取り除く機構となる。架橋切断が行われると遊離硫黄が生じるが、遊離硫黄は活性が高く、すぐに酸化して硫黄酸化物となるため脱揮によって除去できる。臭気の除去が不十分だと脱硫品の内部に臭気が残留し、硫黄臭の漂う脱硫品となる。脱臭部では効率的な臭気の除去を図るため、表面更新と水添による脱揮を図り、脱揮効率は水添直下の混練部形状や水添量、真空度、シリンダ設定温度に依存する。これらのパラメータは、再生ゴムの残留臭気の程度によって調整する。

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