技 術 報 告(20)二軸押出機 TEX® を用いた脱硫技術Screw C:Screw C は、通常のニーディング構成をベースとしつつ、薄型のニーディングディスクのみを用いた設計となっている。分配混練を主目的とした構成であり、局所的なせん断応力や発熱の抑制を意図している。ディスク厚みを抑えることで、原料への過度な機械的負荷を避けつつ、均一な分配効果を期待する設計思想に基づいている。表 1 に TEX-FAN を用いたシミュレーションの計算条件を、また図 3 に計算結果を示す。図 3 に、TEX-FAN を用いたシミュレーション結果を示す。3 種類のスクリュ形状(A、B、C)について計算を行い、各スクリュの構造的特徴とプロセス挙動の違い、特に脱硫に影響を与えると考えられる主要なパラメータである滞留時間、樹脂温度、混練度合いを示すシリンダ内圧について比較を行った。スクリュ A は、順ニーディングを主体とした構成であるため、全体的に圧力勾配が緩やかであり、シリンダ内圧も他と比べやや低く推移した。一方、スクリュ B と C は、いずれも高い圧力を混練部入口付近から維持する傾向が見られた。また、混練部を通過した後に得られる樹脂温度の上昇傾向および滞留時間に関しては、いずれのスクリュにおいても大きな差異は見られず、ほぼ同等の挙動を示すことが確認された。スクリュ A は、混練部前半におけるシリンダ内圧が低く推移しており、原料に対して十分な混練が加えられていない可能性が示唆された。一方、スクリュ B およびスクリュ C は、混練部全体にわたり類似した内圧分布を示しており、一定の混練強度が維持されていることが確認された。シミュレーション上では数値として違いが現れていないものの、スクリュ B は局所的なせん断応力や発熱を抑制することを狙った断面形状となっており、スクリュ C に比べて混練ムラの少ない処理が期待される。以上の結果から、スクリュ B が最も安定した混練挙動を示す構成であり、脱硫プロセスにおいても有効なスクリュ形状である可能性が示唆された。図 3 TEX-FAN によるゴム脱硫部スクリュ形状の計算結果図 2 スクリュ形状表 1 TEX-FAN 計算条件ニーディングディスク幅、混練部内圧、といったパラメータの影響を確認することを狙ったスクリュ形状を用い、それぞれの挙動と脱硫性能への影響を比較した。なお、図 2 に示すのは脱硫部のスクリュ構成であり、その上流側に位置する微粉砕部については、前回のテストにおいて最適と判断されたスクリュ形状を共通仕様として採用している。Screw A:Screw A は、一般的な構成であり、幅広のニーディング要素と薄型のニーディング要素を組み合わせることで、分散性能と分配性能のバランスを重視した設計となっている。また、低い圧力勾配が得られる順ニーディング主体の形状となっており、これにより、原料に対して適度なせん断応力を加えつつ、均一な混練状態を維持することが可能であり、安定した脱硫反応の実現に寄与することを狙った。Screw B:Screw B は、局所的なせん断応力および発熱の抑制を目的として、チップクリアランスを大きく確保した特殊な断面形状を採用したスクリュ構成である。これにより、原料に対する過度な機械的負荷を避けつつ、穏やかな混練環境を実現することを狙いとしており、特に脱硫プロセスのような原料に付与する熱やせん断エネルギーに対して敏感なプロセスでは、脱硫反応の均一性を高める効果が期待される。
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