技術報告(21)日本製鋼所技報 No.76(2025.11)二軸押出機TEX®を用いた脱硫技術4.3 テスト方法・結果テストで用いた装置の構成を図4に示す。二軸押出機は日本製鋼所製TEX44αⅢを用い、原料はEPDM加硫ゴムシートを粉砕して使用した。本テストでは、脱硫部の影響を評価するため、微粉砕部のスクリュ形状を統一し、脱硫部のみ変更した3形状(スクリュA、スクリュB、スクリュC)で実施した。押出量Q = 30 kg/h、スクリュ回転速度Nsを150 rpm~642 rpmの範囲で運転を行い、サンプルを採取した。4.4 物性評価結果テストで得られた試料と使用した原料についてトルエンによる膨潤試験を実施し、膨潤前と乾燥後の重量からゾル分率、膨潤平衡後と乾燥後の重量から膨潤度qを算出した。また膨潤試験中にトルエンに溶出したゾル成分はゲル浸透クロマトグラフィーを用いて分子量分布を測定し、重量平均分子量Mwを算出した。ゲル分率は、溶媒中に溶解しないゴム成分の3次元網目構造(主に架橋部分)の重量比率を示すものであり、値が低いほど架橋構造の切断や分子鎖の切断が進行していることを示唆する。一方、膨潤度は、溶媒を取り込む度合いを示す指標であり、値が高いほど架橋密度の低下や分子鎖の切断が進行していると判断される。これらの指標を用いて、各スクリュ構成による脱硫挙動の違いを比較・考察した。図5に各スクリュにおいてQ = 30 kg/hでNsを変更した場合のゲル分率、q、Mwを示す。いずれのスクリュ構成においても、回転数の上昇に伴ってゲル分率が徐々に低下する傾向が確認された。3種のスクリュ形状間で明確な有意差は認められなかったが、回転数の影響としては、せん断エネルギーの増加により架橋構造の切断が進行したことを示すものと考えられる。また、qは全てのスクリュ形状において400 rpmで最大値を示し、Nsによってスクリュ形状によるqの大小関係は変化したが明確な傾向は確認できなかった。脱硫により架橋密度が低下するとトルエンの保持量が増加するため、qが増加するが、この結果より400 rpmで最も効率良く脱硫が進行したと考えられる。また、Nsが増加するに伴い、Mwは低下する傾向が見られた。これはNsの増加とともにスクリュによるせん断応力が上昇し、架橋や分子鎖が切断されたことが原因であると考えられる。スクリュ形状で比較すると、Mwは全てのNsにおいてスクリュBが最も高く、スクリュCが最も低い傾向が見られた。全てのNsにおいてスクリュBのMwが最も高い原因の一つは、局所的なせん断応力および発熱の抑制を目的としており、チップクリアランスを調整した特殊なニーディングを用いた構成であることで、主鎖の切断を抑えつつ脱硫が進行していると推察される。また、スクリュBにおいてNsが図4 装置構成図5 各種物性評価結果とスクリュ形状、スクリュ回転の関係
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