技 術 論 文(2)2. 溶接試験の方法3. 変態塑性係数 K の測定低合金鋼の溶接残留応力解析の精度に及ぼす変態塑性の影響Table 2 Chemical compositions of the test material.sectional macro-observation.Fig. 1 Schematic illustration of welding test block for measuring residual stress.Fig. 2 Locations of residual stress measurement and cross-Table 1 Welding conditions.ば溶接残留応力を精度良く予測できない(2)。相変態が生じると、材料特性の変化や変態膨張といった一般的によく知られている挙動に加えて、変態塑性と呼ばれる現象が起きる(3)。変態塑性とは、降伏点以下の負荷応力でも大きな非弾性ひずみが生じる現象である。村田らは熱サイクル試験および溶接試験の結果に基づき、溶接残留応力には変態膨張のみならず変態塑性も寄与することを報告している(4)。相変態を考慮した溶接残留応力解析はこれまでに多くの研究者が報告しているが、それらの多くは材料特性の変化や変態膨張を扱った事例(5) , (6)である。また、変態塑性を含む解析手法に着目した事例(7)も見られるが、実物の溶接残留応力と比較した事例はなく、変態塑性が解析精度に及ぼす影響は明確になっていない。そこで本報告では、まず溶接試験体を製作して溶接残留応力を測定した。つぎに、変態塑性を定義するための物性値である変態塑性係数 K を実測し、汎用 FEM コードABAQUS で変態塑性を考慮するユーザーサブルーチンをコーディングした。さらに、コーディングしたサブルーチンを用いて非定常熱弾塑性解析を行い、溶接試験体における残留応力の実測値と解析値を比較して変態塑性が解析精度に及ぼす影響を明らかにした。2.25Cr-1Mo-V 鋼を供試材とし、溶接試験体を製作して残留応力測定を行った。試験体の形状は Fig. 1 に示す80 mm×80 mm×240 mm で、その 1 面に深さ2.5 mm の溝を加工して 1 パス盛り溶接を施した。溶接条件を Table 1、試験材の化学組成を Table 2 に示す。溶接法は GMAWで、シールドガスには 80 % Ar + 20 % CO2 の混合ガスを用いた。溶接材料には JIS Z 3317 G62M-2C1M2 を用い、予熱温度は 190 ℃とした。溶接後には、ASTM E837 に準拠して Hole Drilling 法(HD 法)(8)で溶接施工表面の残留応力を測定した。このとき、ビードの余盛はひずみゲージを貼る都合で測定前にグラインダで除去した。残留応力の測定位置を Fig. 2 に示す。HD 法では隣り合う測定箇所が近すぎると測定結果に影響を及ぼす可能性があるため、本試験では測定位置の間隔が 20 mm 以上となるように計 11 か所の測定箇所を互い違いに配置した。残留応力測定後は断面マクロ観察を実施した。溶接残留応力解析に用いるための変態塑性係数 K は、熱間加工再現試験装置サーメックマスター Z(富士電波工機製)を用いて測定した。供試材は Table 2 に示した化学成分の 2.25Cr-1Mo-V鋼母材(調質材)と溶接金属の 2 種類とし、試験片形状は Fig. 3 に示す通りとした。Fig. 4 に測定条件を示す。試験片を高周波加熱で 1200 ℃まで加熱 ・ 保持したのち、−60 MPa ~ +60 MPa の応力を負荷しながらベイナイト変態させた。試験中は試験片の中央部(Φ 8 mm)
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