製品・技術紹介 1. はじめに(55) 2. スラグドラッガーの構成とメリットえる方式であることから、電気炉出鋼から取鍋精錬(Ladle Furnace:以降 LF)工程までの溶鋼の温度低下が大きいこと、取鍋の耐火物コスト・予熱コストが余分に発生してしまうことがデメリットであった。そのため、リレードル法の使用頻度を減少させるためにスラグドラッガーを導入した。スラグドラッガーは、少湯量でも効率的に除滓を行うことができる装置であり、その導入効果について紹介する。スラグドラッガーの概要を図 2 に示す。スラグドラッガーは傾転装置と除滓装置で構成されている。傾転装置はクレーンの吊りフックを掛けて吊り上げることにより取鍋を傾転させる装置であり、除滓装置は本体が前後駆動、アーム部が上下左右の旋回駆動、除滓板が前後に旋回駆動する機構である。スラグドラッガーによる除滓法(取鍋除滓法)は、電気炉スラグごと溶鋼を取鍋に受鋼し、取鍋を傾転装置にセット、傾転装置をクレーンで吊り上げて取鍋を傾け、除滓装置を操作して取鍋上面のスラグを除滓する流れである。また、スラグドラッガーのメリットとしては、以下の点が挙げられる。 日本製鋼所技報 No.76(2025.11)図 1 電気炉からの出鋼方法当社では、インゴット鋳造により、様々な化学組成および重量の鍛鋼品を小ロット生産体制で製造している。製鋼工場ではこれらの製品に必要な鋼塊を電気炉により溶製している。電気炉では、必要な湯量や次ヒートへの成分汚染を考慮し、通常は残湯法を、全湯出鋼する最終ヒートでは電気炉除滓法かリレードル法を使い分けている。図 1 にそれぞれの模式図を示す。① 残湯法:出鋼口に設置したプレートによって溶鋼を電気炉内に一部残すことによって取鍋内にスラグを入れない方法② 電気炉除滓法:電気炉側面に設けられた除滓口から薪を使用して人力でスラグを排出する方式③ リレードル法:一旦取鍋に溶鋼とスラグを出湯し 2 基目の取鍋に移し替えるときに溶鋼のみを注入することでスラグを分離除去する方法少湯量の場合は湯面高さが低いため電気炉除滓法では規定量の除滓ができないことからリレードル法を用いている。一方でリレードル法は、取鍋を 2 基使用し溶鋼のみを移し替製品・技術紹介スラグドラッガー導入によるエネルギー改善スラグドラッガー導入によるエネルギー改善
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